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電力・ガス自由化Summit「先進事例に学ぶ海外のエネルギー自由化」が開催

  • 02 March 2017
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2016年4月、日本でも電力小売りが全面自由化され、一般企業も、新たに発電、小売、送配電などの事業を行えるようになりました。日本国内では電気事業のビジネスチャンスが大きく開けたことになりますが、1990年代にエネルギー市場を自由化した英国にとっても、日英のパートナーシップをはかる良いチャンスととらえられています。

 

「電力・ガス新ビジネスEXPO2017」での駐日英国大使館のブースこうした状況のもと、2017年2月15日(水)から17日(金)まで開催された「電力・ガス新ビジネスEXPO2017」の一環として、17日に一般財団法人 省エネルギーセンター・株式会社JTBコミュニケーションデザイン主催の「先進事例に学ぶ海外のエネルギー自由化」と題したセミナーが開かれました。英国から、エネルギーマネジメントのビジネスを展開するブリストル・ブルーグリーン社、液体空気エネルギー貯蔵システム開発を手がけるハイビュー・パワー社、水素生成技術開発を手がけるITMパワー社の各代表者が来日し、自社のサービスやコア技術などについて講演しました。当日の模様をレポートします。

 

駐日英国大使館 公使参事官 経済・科学・戦略・広報担当 ロザリンド・キャンピオン冒頭でまず、駐日英国大使館 公使参事官 経済・科学・戦略・広報担当のロザリンド・キャンピオン氏が、電力自由化後の英国におけるエネルギー政策や課題について概説しました。「英国は2008年に気候変動法を策定し、2050年までに温室効果ガス排出量を80%削減するとの目標を設定しました。さらに2012年、目標の達成に向けた電力市場改革プログラムを導入しました。電力安定供給を維持しつつ、電力料金の上昇を最小限に抑えながら、二酸化炭素排出が少ない電力を増やすのが狙いです。具体的には、差額決済契約付固定価格制度(FIT with Contracts for Difference)、炭素下限価格(Carbon Price Floor)、排出性能基準(Emission Performance Standard)、容量市場(Capacity Market)の4つからなります」とキャンピオン氏。

 

差額決済契約付固定価格制度は、二酸化炭素排出の少ない電源に対してあらかじめ価格を設定し、それが電力市場価格よりも高い場合には差額を政府が電力会社に払い、逆の場合には電力会社が政府に返金するという仕組みだそうです。また、炭素下限価格は「化石燃料に税金を課すことにより、二酸化炭素排出権の取引価格を一定水準以上に維持する仕組み」、排出性能基準は「(炭素の排出に制限を設けることにより)二酸化炭素回収・貯留技術なしでは石炭火力を新設することが不可能になる」、容量市場は「電力消費のピーク時にも安定供給できるよう、電力容量を確保するための入札制度」だそうです。

 

最後にキャンピオン氏は「メイ首相は、産業戦略のグリーンペーパーを発表し、その一部として低炭素で低価格なエネルギーの実現に向け脱炭素目標に向けた対策コストの削減、特に事業者のエネルギーコストを最小限にするためのロードマップを発表することと述べました。また、バッテリー、エネルギー貯蔵、系統に対する研究に注力し、政府はスマートシステム、産業エネルギーコスト削減や洋上風力発電などのプロジェクトに対する2,800万ポンドの予算投入を発表しました。英国も様々な課題に直面していますが、日本もまた大きな岐路にあると言えましょう。互いに協力し、新たな領域でも日英のパートナーシップが発揮されることを願います」と結びました。

 

電圧制御による、次世代のビルエネルギー管理サービス

ブリストル・ブルーグリーン社会長 アンソニー・パーカー氏最初の登壇者は、ブリストル・ブルーグリーン社会長のアンソニー・パーカー氏でした。ブリストル・ブルーグリーン社は、出力電圧の最適化とそのモニタリング技術により、電力消費の管理や削減をマネジメントする企業です。パーカー氏は、25年にわたって各国で様々な事業の立ち上げに携わってきました。ブリストル・ブルーグリーン社との関わりは約10年におよび、2013年に同社の会長に就任。現在は、事業戦略、商業パートナーとの交渉責任者を務めています。

 

 

「当社は、スマート電圧管理による省エネの実現を目指す会社です。英国では、電圧を10%削減すれば、ビル内の消費電力を6%から12%削減可能です。ミッションは、コスト削減、低炭素化、電圧不均衡の解消などを実現する電圧制御技術開発にあります。リバプールに研究開発拠点を置き、製品開発、特許出願、実装に向けた取り組みを進めています」と同氏。

 

パーカー氏は、ブリストル・ブルーグリーン社の変圧装置(BG25など)について「コントロールボードによって電圧を安定して制御できます。世界標準で考えると100Vという日本の電圧はやや珍しいのですが、当社の技術で100Vを95Vに変換して安定供給可能です。変圧装置は建物の規模に応じて複数タイプを用意しています」と説明し、次のように続けました。「入力電圧、出力電圧、消費電力などのハードデータを実測し、冷蔵庫などの機器ごとに把握することもできます。各データはスマートフォンなどで確認可能です」。

 

さらに、大型の変圧装置BG75では位相電圧の不均衡を排除できること、電圧を安定させることで電気機器へのダメージを防いで寿命を延ばせることにも言及し、「当社とのパートナーシップについてぜひご検討ください」と結びました。

 

液体空気エネルギー貯蔵で、送電網の安定化と弾力化を向上

ハイビュー・パワー社 ビジネス開発ディレクター マシュー・バーネット氏2番目は、ハイビュー・パワー社のビジネス開発ディレクター、マシュー・バーネット氏が講演しました。ハイビュー・パワー社は液化した空気のエネルギー貯蔵ソリューションを提供することで、地理的条件に左右されない発電に寄与しています。バーネット氏は製造エンジニアの出身で、エネルギーセクターのスタートアップ企業、ベンチャーキャピタルの支援を受けた企業などを相手に、様々なテクノロジーによるビジネスを展開してきた実績があります。現職では、ハイビュー・パワー社の技術開発トップを務めています。

 

バーネット氏はまず、ハイビュー・パワー社の変遷について紹介しました。「私たちは液体空気の貯蔵システム開発を目指す、開発専門の会社です。2005年にコンセプトレベルでの業務を開始し、学術およびビジネス面での検討を重ねてきました。同時に、要素プロセスの開発とパートナーシップ化もはかり、ようやく液体空気エネルギー貯蔵システムを実現するところまできています」。

 

続いて、液体空気エネルギー貯蔵ソリューションのメリットについて説明。「当社には3つの主要コンポーネントがあります。空気の液化、低圧保存、再気化の各技術です。液化した空気を貯蔵し、必要に応じて高温高圧の空気に戻し、タービンを回して発電するというシンプルな仕組みです。海のそばでなければならないといった地理的な制約を一切受けず、有害物質を排出することもなく12時間以上の発電が可能です。電力消費ピーク時に備える、廃熱を利用する、といったように臨機応変に使えるシステムで、工場などの運用効率アップが望めます」とバーネット氏。

 

終盤には、GEオイルガスとの提携例や石炭火力発電所への併設例なども紹介し、「日本でも、既存の技術や設備に対応して設置可能で、エネルギーコストが削減されることも実証済みです。日本の状況を深く理解し、ステークホルダーのみなさんとも協力していきたいと考えています」とまとめました。

 

クリーンな水素燃料生成と、その貯蔵システム

ITMパワー社 マネージング・ディレクター ジョン・ニュートン博士最後は、ITMパワー社のマネージング・ディレクター、ジョン・ニュートン博士が登壇しました。ITMパワー社は、再生可能エネルギー実用化のコア技術とされる水素生成技術や、その貯蔵・供給システムの開発を手がけています。ニュートン氏は19年以上にわたって、R&D、サプライチェーン構築、海外ビジネス開拓、エンジニアリング・コンサルティングなどを手がけ、2013年に現職に着任。英国政府の再生可能エネルギー査定官も務めています。

 

 

冒頭でニュートン博士は、水素技術を使うことによる送電事業者のメリットを次のように説明しました。「水を原料にして水素を製造すれば廃棄物を一切出さないゼロエミッション化も可能です。英国は再生可能エネルギーを大規模に取り入れ始めていますが、現状では、再生エネルギー基準値の25%を超えると電力の供給と需要のバランスに問題が出てきます。送電事業者側に何らかの設備実装が求められますが、当社の水素生成技術が役に立ちます」。

 

さらに、水の電解装置や水素圧縮部などで構成される水素充填ステーションについても概説。「エネルギーを水素に変え、それを車や学校で使えるようにすれば、ゼロカーボンも実現可能です。すでに、スコットランドの諸島部では、当社の電解装置を導入した実装が進んでいます」とし、昭和シェル石油やトヨタなどの日系企業とのパートナーシップが進んでいることにも触れました。

 

最後は、既存のガスネットワークを水素供給網として利用するシステムについて紹介し、「ガスネットワークは送電網よりも大量のエネルギーを移送可能で、水素の貯蔵・供給施設として利用するのに好都合です。ドイツのフランクフルトでは、ガスの2%に相当する水素を注入し、その周囲1キロ圏内ではガスネットワークから水素を取り出して燃料電池自動車の充填などに使えることが確認されています。目下、英国でもガスネットワークへの水素注入の安全性を検証し始めています」とまとめました。

 

サイエンスライター 西村 尚子

 


 

当日の講演資料はこちらでご覧ください。

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