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英国のAI最前線:英国のAI人脈は大きな収穫~東芝研究開発センター 三田雄志氏~

  • 14 June 2018
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英国のAI最前線:英国のAI人脈は大きな収穫~東芝研究開発センター 三田雄志氏~英国の人工知能(AI)研究の強みと日英コラボレーションの可能性を探るInnovation is GREATブログの新連載『英国のAI最前線』。第1弾では、アラン・チューリング・インスティテュートやデジタルカタパルトセンターなど、国を挙げてAIに取り組む英国の最新状況についてお伝えしました。

 


 

英国におけるAI研究は、AIだけではなく、ロボットを含め、データサイエンスという、幅広いコンセプト「デジタル経済」を志向する英国の戦略として捉えられています。英国政府は、「デジタル経済が国力を上げる」、という視点でAI研究を組織的に支援しています。そのための研究開発を支える政府の取り組みが、アラン・チューリング・インスティテュートであり、デジタルカタパルトセンターです。これらの機関は、大学と企業が密接に連携し、大学の研究をビジネスへつなげ、経済の発展を進めることが狙いです。

 

2018年2月、駐日英国大使館はアラン・チューリング・インスティテュートやデジタルカタパルト施設などを含む、英国の主要大学・研究所・ベンチャー企業を日本企業にご紹介する視察プログラムを実施しました。『英国のAI最前線』第2弾は、本プログラムに参加された東芝研究開発本部研究開発センターのアナリティクスAIラボラトリー室長を務める三田雄志氏とのインタビュー記事をお届けします。

 

研究施設・ビジネスの両面で支援

英国におけるAIの取り組みとしては、2015年3月に設立されたアラン・チューリング・インスティテュートが英国内の各大学と連携し、AI研究者を様々な機関から呼び寄せるなど、AI研究を活発にしています。日本でも同様な取り組みとして、文部科学省の元に2016年4月、理化学研究所に革新知能統合研究(Advanced Intelligence Project、以下AIP)センターが設立されました。
※エジンバラ大学と理化学研究所のパートナーシップについてはこちら

 

東芝研究開発センターの三田雄志氏

東芝研究開発センター
三田雄志氏

「理研AIPとアラン・チューリング・インスティテュートは研究機関としての位置づけは類似していると思いますが、デジタルカタパルトのようにビジネス面での支援を強化している点が日本と英国との違いではないでしょうか。デジタルカタパルトの施設は資金力の乏しいベンチャーにAIを研究する場所や、課題を持っているより大きな企業と直接会える機会を提供しており、印象に残りました。」と三田氏は語ります。

 

 

 

 

アラン・チューリング・インスティテュートとデジタルカタパルトは市内の一等地ともいえるキングス・クロス駅近くに設立されています。ここに、AIのスタートアップ企業が常駐できる施設を英国政府が提供しています。この点、日本のAIPセンターも東京の日本橋にあるので、情報アクセスのよい都会で働けることは似ています。アラン・チューリング・インスティテュートは、世界中から人材を集め、異分野の人たちとの交流を通して新しいイノベーションが生まれる仕掛けになっています。

 

研究テーマ自体は、英国のどの大学を見ても日本より進んでいるという訳ではなく、学術分野に関してはあまり変わらない印象を受けたと三田氏は述べています。大きな違いはビジネス支援の点のようです。英国では起業する人が多く、起業家が少ない資金でもAI研究ができる環境が整っています。

 

スコットランド・エジンバラの風景

VisitBritain©Matthew Karsten

「大学でも例えばエジンバラ大学ではベイズセンター(Bayes Centre)と呼ばれる建屋を2018年秋に設立し、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでも新たなセンターを設立しようとしています。大学とビジネス界、政府が一体となって一気にAIの開発へ投資するという印象があります」と三田氏は述べています。ベイズセンターは、大学内外でデータ駆動イノベーションを生み出すためのハブを目的としています。ここでは社会や産業の難題をテクノロジーで解決し新たな価値を創造するため、優秀な人材を惹きつけ、他分野にまたがる協力を加速するエコシステムとなることをビジョンとして掲げています。

 

 

 

差別化を意識する大学

セス・ビジャヤクマール教授のヒューマノイドロボット

セス・ビジャヤクマール教授の
ヒューマノイドロボット

三田氏が気になった大学と研究は、エジンバラ大学でロボット研究を行っているセス・ビジャヤクマール教授の火星で作業するロボットだとしています。「ここでは大規模な研究室を持ち、幅広いロボット研究をやっています。各機関からの資金支援をもとに2足・4足のヒューマノイドロボットを作り、AIを組み込もうとしています」と述べています。

 

 

 

 

もう一つ気になった大学は、セントアンドリューズ大学のアーロン・クイッグレイ教授の研究です。これはレーダーセンサを使って、物体が何であるのかを分析・識別する研究を行っています。センシングとものの識別を一体化した研究です。元々レーダーは離れた距離にある物体に電波を発信し、その反射波を見ることで物体の有無を検出してきましたが、クイッグレイ教授の研究は被対象物にレーダーを発信し、その反射強度をはじめとする特徴量を分析することによって、記憶してある物体が何かを識別します。特徴量のデータから材質を見つけることができるというものです。建物や橋梁の点検や検査などに使えると思われるほかに、三田氏は「(クイッグレイ教授は)高速で材質がわかることがこの技術の持つ強みである、とその可能性を強調されていました。反射の度合いや拡散などの量からセンシングした情報も使って材質を見分けるという技術です」。

 

これまでは、写真や音声や画像を使ってディープラーニングで学習させ、識別するAI研究が多かったようですが、ありふれたデータを覚え込ませるだけのAIでは、ほかのAI研究とは差別化が容易ではありません。クイッグレイ教授の研究はセンシングにオリジナリティがあるためほかでは取れない情報があると三田氏は言います。それをディープラーニングと組み合わせて使うことにより、差別化できる製品を生み出すというのです。クイッグレイ教授によると、この研究は企業からの引き合いが多いそうです。

 

東芝の研究開発センターでもセンシング手段と機械学習とを組み合わせる研究はすでに行っています。三田氏は、ハードウェアとソフトウェアをどのように親和性良く融合しているか、ということに興味があるため、エジンバラ大学のビジャヤクマール教授の火星ロボットと、セントアンドリューズ大学のクイッグレイ教授の研究に注目したと述べています。

 

東芝独自のリクルーティング方法を模索

三田氏は一概には言えませんが、と断りながら、英国におけるAI研究は、全世界から研究者が集まっているため、日本と比べると優秀な研究者の数は多いようです。ただし、その分、共同研究費は高く、1件当たり数十万ポンド以上と聞いているそうです。「英国のプロジェクトのスポンサーとしてインテル社や華為技術(Huawei Technologies)のような大企業が資金を投入しています。これには研究そのものに投資するだけではなく、人材を囲い込むという目的もあるのではないだろうか」と三田氏は見ています。

 

研究室からの人材をリクルーティングすることや、将来のAIの大御所となるべき人材とのコネクションが狙いではないか、と思いました、と三田氏は言います。今回、どこの大学へ行ってもインテルと華為の名前が出てきたので、そのように感じたようです。

 

英国との人脈形成を生かす

ケンブリッジ大学のキングス・カレッジ

VisitBritain©Iain Lewis

東芝としては、今までは、たとえばケンブリッジ大学のロベルト・チポラ教授とは、東芝フェローとして在籍いただいた後、東芝ケンブリッジ研究所の所長になっていただいたそうです。「いろいろな大学に資金を提供しながら網をかけていくような大きな投資はなかなかできませんが、コンピュータビジョンの大家でもあるチポラ教授と良好な人脈(コネクション)によってケンブリッジ大学との協力関係ができました。」と三田氏は述べています。

 

 

 

1960年代の郵便番号自動読み取り技術以来、東芝のパターン認識の技術は60年の歴史があります。オックスフォード大学には、画像認識で有名な先生が多く、以前よりこの分野に興味がありました。今回の訪問ではコンピュータサイエンスとエンジニアリング関係の研究者が多く、やはり画像認識の研究者を見つけ、人脈を広げることができたようです。

 

今回の視察ではケンブリッジ大学の訪問機会はありませんでしたが、東芝ヨーロッパ社のケンブリッジ研究所を介した英国の各大学との連携の強化を図っていくことの重要性を再認識したそうです。東芝のケンブリッジ研究所はケンブリッジ大学から自動車で15分ほどのビジネスパークにあり、ケンブリッジ大学とも更に密接な関係を築いていきたいとのことでした。

 

国際技術ジャーナリスト 津田 建二

 


『英国のAI最前線』第3弾は、AIの第一人者の一人で人工知能学会の倫理委員長を務める、東京大学大学院工学系研究科で技術経営戦略額専攻の松尾豊特任准教授へのインタビュー記事を掲載します。

 


 

駐日英国大使館は人工知能(AI)に焦点を当てたキャンペーンを実施中。キャンペーンの一環として、このたび英国のテクノロジー・コンサルティング企業であるケンブリッジ・コンサルタンツ社に、英国のAIの強みと日英協業の可能性に関する調査を委託しました。世界のAI研究を牽引する英国。その成功の裏には2つの要素があると、ケンブリッジ・コンサルタンツ社は言います。調査レポートの全文(日本語版)は下記のフォームにご登録いただくと無料でダウンロードできますので、AIにご興味のある方はぜひご覧ください!

 


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