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英国におけるアントレプレナーシップ教育

  • 29 October 2015
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アントレプレナーシップとは

「アントレプレナーシップ」。最近よく聞くこの言葉、日本語では「起業家精神」とも訳されます。つまり、自ら新たな事業を創り出そうとする精神のことです。

 

アップル、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック、ツイッター・・・。おそらく今最もよく名前を聞くこれらの会社は、いずれも、一人のまたは数人の、「よし、新たな事業を立ち上げよう!世界を変えよう!」という強い意志と実行力を持った若者達によって立ち上げられました。そして、スタートした時は小さな規模だったものの、いつしか社会を動かす巨大な会社となっていきました。彼らが持っていた精神こそが、アントレプレナーシップです。

 

インターネットによるコミュニケーションの方法が急激に発展する今、お金がなくとも、自らのアイディアとバイタリティーによって新たな事業を起こすことは、ますますやりやすくなってきています。そして、実際に小規模のスタートアップ企業がどんどん成長して世界を動かしていく例が多いため、様々なベンチャーキャピタルやアクセラレーターがそうした事業に投資、支援する流れができてきています。

 

しかし、その華やかさが喧伝される一方で、自ら起業して成功するのはそう簡単なことではありません。実際に新たな事業を起こして成功するためには、高いリスクも受け入れ、困難にぶつかってもそれを解決して乗り越え、自らの道を確立していく必要があります。

 

成功するためにはどうすればよいのか。成功を収めてきた起業家は、どのような精神を持っていたのか。そうしたことを教え、学ぶのがアントレプレナーシップ教育です。

 

英国経済を支えたアントレプレナーシップ教育

ケンブリッジ大学

アントレプレナーシップ教育は、ビジネススクールを中心に、今や大学・大学院の高等教育の現場においてとても重要な学習テーマとなっています。その教育に、世界でも特に力を入れているのが英国です。

 

 

 

 

英国は1960年代以降、経済の低迷が続きましたが、その状況を打開するための一つの策が、大企業中心の経済から、中小企業や新しく起業された会社を中心とする経済へとシフトすることでした。それが実際に実を結び、英国の経済は回復に向かいましたが、その際に大きな役割を果たしたのがビジネススクールや大学におけるアントレプレナーシップ教育でした。大学が起業家に着目し、新たな起業家を生み出すことをバックアップしたことによって、経済が活性化していったのです。

 

また、今や日本でも広く知られる「社会起業家」という言葉があります。社会の問題を解決するため、社会に変革を起こすためにビジネスを起こす起業家のことを指します。世界的に知られている社会起業家としては、貧困層に低金利無担保融資をするグラミン銀行を立ち上げ、2006年にノーベル平和賞を受賞したバングラデシュのムハマド・ユヌス氏がいます。彼のように高い志を持ち、社会のニーズにこたえながらビジネスとしても成り立つ事業を起こしている社会起業家が、日本にも英国にも数多くいます。この社会起業家という存在も、1980年代頃から英国を中心に大きく広がっていったのです。

 

ハイテク企業が地元の大学と手を組む長期計画"UEZs"

さて、そうした背景のもとで英国のアントレプレナーシップ教育は発展してきましたが、その動きをさらに発展させる計画が2013年にビジネス・イノベーション・職業技能省(BIS)より発表されました。

 

それが、University Enterprise Zones(UEZs)です。UEZsは、立ち上げ初期の段階にあるハイテク企業が地元の大学と手を組み、専門的な知識共有や、協力し合える「ゾーン」を特定の地域に設ける試みです。企業は成長のための知識的・技術的支援を受けられると同時に、大学にとってはアントレプレナーシップ教育の実践の場となるというわけです。

 

キャメロン首相は、この計画について次のように話しています。

「これは、英国経済の未来を考えた長期計画の一つです。高等教育機関と企業が力を合わせ、経済成長を促すことで、より多くの雇用が生まれることを願っています。英国の世界トップクラスの大学は、歴史的にもイノベーションにおいて中心的役割を果たしてきましたが、社会の成長により寄与しやすいような環境を私たちが用意する必要があるのです。」

 

「学位を取得したらすぐにでも手頃なオフィスを借りて事業を立ち上げたいという学生にとって、UEZsは大きな可能性を開くことでしょう。UEZsによって次世代のヤフーやマイクロソフトが生み出され、その地域と周囲の経済を発展させ、雇用を生み、さらに世界的な競争でも英国が勝てるようになれることを願っています。」

参考記事(英語):£15 million boost for local business growth at universities

 

「センサーシティ」リバプールなど、動き出した4つのUEZs

ゾーンは試験的に、ブラッドフォード、ブリストル、リバプール、ノッティンガムの4か所に作られ、2014年から2017年までの間に、政府は計1500万英ポンドを投入することになっています。

 

各ゾーンは、それぞれの地域の大学と連携して発展することを目指しています。たとえばリバプールのUEZでは、リバプール大学とリバプール・ジョン・ムーアズ大学を軸として、特に「センサー技術」を焦点に新しいハイテクビジネスを起こそうと計画しています。センサー技術は、セキュリティから医療まで幅広い分野で使われる重要なものです。まずリバプールの町を「センサーシティ」として広く認知してもらうことで、リバプールの他のハイテクスタートアップ企業へも投資を呼び込みたいと考えています。

参考記事(英語):Chancellor builds Northern Powerhouse with new funding for science and Atlantic Gateway in Liverpool
 

一方、ノッティンガムのUEZはノッティンガム大学と連携しています。同大学のビジネススクールは、アントレプレナーシップ教育の専門機関(Haydn Green Institute for Innovation and Entrepreneurship )を持っています。複数の賞も設け、学生たちの起業を積極的に後押しており、すでにここからいくつかのスタートアップ企業が実際に動き出しています。

 

有効とわかればUEZsは今後ますます広がっていく

UEZsはまだ試験的な段階ですが、上記4か所によってその有効性がはっきりすれば、英国全土にその数を増やしていくことが計画されています。

 

アントレプレナーシップ教育を受けられる大学は、英国にはすでに数多くあります。アントレプレナーシップとイノベーションに関するコースを持つビジネススクールの例としては、サリー大学、マンチェスター大学、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学などがあります。また、専門分野とアントレプレナーシップを同時に専攻できる大学院として、ケント大学、ノッティンガム大学、ストラックライド大学などがあります。こうした大学の多くが、今後UEZとなっていくかもしれません。

 

ちなみにケンブリッジ大学は、英国で最もアントレプレナーシップに富んだ大学として、Real Businessの記事内で紹介されています。

参考記事(英語):The UK’s six most entrepreneurial universities

 

同大学は世界のトップ3に入る名門で、ノーベル賞受賞者を世界で最も多く輩出しており、大学の研究成果や多数の起業家を出した実績でも知られています。それらは「ケンブリッジクラスター」と呼ばれ、1960年以来、1400程度の企業を生み出してきました。

 

ロンドンには世界のIT産業の新しい拠点ともいわれるテックシティも生まれ、今後ますます英国における起業は活発化しそうです。その中で大学がどのような役割を果たしていくのか、注目が集まりそうです。

 

ライター 近藤 雄生

http://www.yukikondo.jp/

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