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ロンドンで活躍するStreamhub創業者・土屋昭洋氏が語るテックシティ

  • 19 January 2016
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テックシティはスタートアップの新たな一大拠点として今、起業家や投資家から世界的に注目を集めています。ここ5年ほどの間に1000を超える新しい企業がこのエリアに誕生し、現在も日々、急速に変化しています。

 

Streamhub創業者 土屋昭洋氏

実際に現場はどんな雰囲気なのか、今後どうなっていくのか。今回は、ロンドンと東京を拠点にVOD(ビデオ・オン・デマンド)や動画サービス、オンラインビデオのリアルタイム視聴データのロイヤルティ分析をする「Streamhub」創業者である土屋昭洋(Aki Tsuchiya)さんにお話を伺いました。

 

土屋さんは、2000年より、MTVが日本に進出する際のエグゼクティブ・チームのメンバーとして、日本を始めアジア各国での展開に貢献しました。その後、2006年からはSkype創業者らと共に世界初の合法VODサービス「Joost」を立ち上げ、プロジェクトマネジャーなどとして新たなビジネス構築に取り組んできました。

 

そうした経験をもとに2010年に起業して以来、様々なプロダクトを作り出し、2014年にはStreamhubのビッグデータ・プラットフォームをベータ版として立上げ、現在に至ります。Streamhubは、世界のメディア企業が展開する動画配信事業の番組視聴ビッグデータを収集し、ロイヤルティ分析として提供しています。独自のデータ技術とディープ・ラーニングを駆使した分析力への評価は高く、受賞暦も多くあり、世界的に注目されている企業です。

 

まさにテックシティの黎明期にロンドンで起業され、同市における現在までの急激な変化を生でご存知であると同時に、東京にも拠点を持ち、日本のスタートアップシーンにも触れている土屋さんに今回、ロンドンや東京での起業をテーマにインタビューをさせていただきました。
(ロンドンの現在のスタートアップシーンの概観についてはこちら:テックシティとカタパルトにみる英国のアントレプレナーシップ

 

——ロンドンではスタートアップと大企業との連携が特徴的であるという声をたびたび聞きます。実際にロンドンで起業されている土屋さんは、その点に関してどうお感じになりますか。

 

確かに日本と比較すれば、ロンドンにおけるスタートアップと大企業との関係は、よりオープンに感じられます。B2CかB2Bにもよりますが、セクターによっては大企業(Telefónica、Google、BBC)がインキュベーター(起業を支援する事業者)を設立したり、テック・ベンチャー向けのコンペ等を開催したりしています。

 

ただし、シリコンバレーのように大企業が率先してベンチャーと組んでプロジェクトを進めるという形の連携は、メディア業界においては多くありません。まずはトライアルとして数ヶ月間を無償で行い、その後導入の可否を判断するという例は多くありますが、トライアルにたどり着くまでに相当の営業が必要です。

 

こうした状況からロンドンでは、大企業との連携が特になくても成立するサービスが目立っています。例えばフィンテック(FinTech=金融と技術を組み合わせたビジネス分野)では、GoCardless、TransferWise、Funding Circleなど、大企業が長年守ろうとしてきた既得権益を壊し、消費者や中小企業のバリューに繋がるディスラプティブ系のサービスが多く生まれています。

 

弊社はメディア業界におけるB2Bのビッグデータ・サービスですが、制度的な大企業との「連携」は経験していません。ただロンドンでは多くの大手企業がベンチャーに対して興味を持ってくれるので、営業に励んで顧客獲得に繋げてきました。

 

——NetflixやYouTubeなど、映像関連の有名企業の多くがアメリカ西海岸を拠点としている中、Streamhubがロンドンを拠点にされていることのメリット、デメリットなどがありましたら教えてください。

 

NetflixやYouTubeは弊社と直接のビジネス関係はありませんが、彼らの提供しているVOD形式のサービスは、世界中の多くのメディア企業が独自に取り組み始めています。そのため営業戦略としてはネットインフラも整っていて、より多くのメディア企業が密集しているヨーロッパを拠点とするのが最適だと考えています。アメリカとも5時間の時差で会話ができるため、世界のどちらに顔を向けても多くのお客様のサポートができるメリットがあります。その中でも日本が一番遠いですが、早起きして頑張っています!

 

その他の大きなメリットは、第一に英語圏であることです。かつ、欧州一の大学や大手企業の欧州ヘッドクォーターがあることから、ハイスキルな人材が集まりやすいのが大きな魅力です。もちろんその分人件費は高いですが、政府もベンチャー支援用の税金免除プログラムを組んでおり、斬新な技術を開発している企業に対しては雇用関連の税金が還付されるため助かります。「テックシティ」という看板が掲げられて以降は、ますます有能な人材がスタートアップを求めて集まってくるという流れができてきています。そしてロンドンは複数のセクターが一つの都市に集まっているため、物の考え方にバラエティがあります。

 

デメリットは、アメリカと比べてサクセス・ストーリーも限られており、ムーブメントとしても初期段階のため、ベンチャーに対する信頼と期待感をもっと育成していく必要があることです。「連携」について言えば、コラボレーション事例はまだ多くありませんし、ベンチャーキャピタルも、リスクを取りたがらず、設立したてか、すでに売上ベースがあるベンチャーに投資する傾向が強いです。

 

——テックシティではここ5年ほどの間に急激に企業の数が増えていますが、ロンドンのこの傾向は今後どのようになるとお考えでしょうか。

 

今後どのように成長していくかは実に楽しみなところです。前述したように英国のテック・ベンチャー・ストーリーはまだ始まったばかりです。自国の市場規模が小さいことから、弊社も含め多くのベンチャーがグローバル市場を最初から目指しています。そのため、アメリカとの技術的な差が縮まっていくにつれて、手持ちのビジネスノウハウを活かしてアメリカに続く第二の「ネット大航海時代」を築けるかもしれません。さらに、国ごとの規制が多く、国際展開のハードルが高いフィンテック以外に、Deliveroo、Hubbub、Lystなどのコンシューマー・テックも流行りだしているため、ヨーロッパの特徴を活かした横の展開ができるといいなと期待しています。

 

ただし、ヨーロッパでの展開が厳しいと判断した場合、ある程度の基盤を作り上げた後にアメリカやその他の成長市場に運営拠点を移す企業も多く出てくると思います。メディア・テック系においては「Base79」もそうですが、知り合いのベンチャー2社もアメリカに引っ越しています。

 

もちろん逆のパターンも多くなるでしょう。ヨーロッパからのスタートアップも何社かすでに進出してきています。テックシティとしては、ヨーロッパ英語圏主要国であることを活かし、現在ライバルとして成長中のドイツ、デンマーク、オランダなどのイノベーションハブに対抗できる魅力ある受け皿作りが大切になってくると思います。そのためには、政府によるより具体的な支援、シリコンバレーの初期の頃のような安い家賃、一流大学・企業・起業家のより親密な関係作り、ヨーロッパや英国企業への優先アクセス等が必要となってくるでしょう。

 

サクセス・ストーリーとして最近では、King.com、NaturalMotion Gamesなどゲーム企業のエグジット(M&Aによる株式売却などで資金を回収すること)が目立ちますが、アメリカと比べると規模はまだ小さいです。しかし、英語圏であることからアメリカのベンチャー企業がすぐに進出してくるため、しっかりした競争力を付け、ホームアドバンテージを活用した対策を進めなければなりません。全般的に、アメリカ系のサービスは米国市場の大規模な基盤があるため、価格設定を低く保つことができます。そうすると、ロンドンのように雇用費や家賃が膨れ上がっている状況ではコストベースが常に高いため、シェア獲得のためにはかなりアグレッシブな戦略が必要になります。そして必然的に、成長過程において、スペイン、ポルトガル、東ヨーロッパやインドに技術開発をアウトソースするようになります。それゆえロンドンに残る人員は戦略・営業を中心とした部門が主流になるのではないかと考えています。こうした体制作りを比較的に容易にできることが、ロンドンの強みでもあるかもしれません。

 

——Streamhubはロンドンと東京にオフィスがありますが、日本と英国で実際にスタートアップを立ち上げる中で実感されている一番の違いは何でしょうか。

 

日本では、ベンチャーであっても大手企業同様の対応を求められる場合が多いと感じます。もちろんベンチャーだからといってサポートを疎かにしてはいけませんが、テック系のスタートアップであれば技術力や新規性というバリューにより焦点があてられるべきだと思います。英国では早くから、アメリカのスタートアップ系サービスが現地に社員を立てずとも、便利で技術的に優れているという理由から多くの企業に使われている事例が多数あります。

 

弊社は2010年よりテック開発を進めてきましたが、当時の日本には、自分たちが必要とする技術や経験を持つエンジニアがみつかりませんでした。仮にいたとしてもスタートアップ・カルチャーが根付いておらず、「自営業は結構です」の一言で断られた例も少なくはありません(笑)。逆にロンドンでは30代から40代でも転職に慣れている方が多く、必要な人材をみつけやすいと言えます。

 

ロンドンはそういった環境であるからこそ、最近よく聞く"Fail Fast"(早く小さい失敗を繰り返し、成功に繋げる手法)を実現できます。日本は「失敗」や「ピボッド」を良くないものと考えすぎる傾向がある気がします。もちろん好きで失敗する経営者はいませんが、中途半端なものを長引かせてずるずるといくよりも、必要であれば潔く早めに方向転換する方が理にかなっていると思います。失敗は成功のもと。日本に限らず失敗をマイナス評価しかできないカルチャーは、イノベーションには向いていないと思います。

 

ロンドンではベンチャーで働いていると言うと、それなりのリスペクトを受けます。このメンタリティーの違いが、ロンドンでは大手企業相手でもある程度話しやすい要因かもしれません。

 

——日本のスタートアップの未来は、最初の質問(スタートアップと大企業との連携)とも関連して、シリコンバレーよりもテックシティを参考にすべきだという意見を複数読みました。その点について、日英両国の現場を見てどう感じられますか。また、日本で今後、スタートアップが活性化するために必要なこと、やるべきことはどのようなことでしょうか。

 

シリコンバレーには一度しか訪れたことはありませんが、早い段階からお客様の声を聞きながら開発していくB2Bベンチャーにとっては孤立していて不便に感じました。しかしその一方、孤立しているからこそ生み出せる独自のカルチャーがあり、大学との連携や優秀なエンジニアが多いという強みがあります。その点、テックシティは大都市の一環として成長しているため、まとまったカルチャーは生みにくいかもしれませんが、ビジネスの運営上リソースも多く便利です。

 

東京もロンドンも一つの場所にスタートアップと企業が密集しているため、チャンスを作る機会は多いかもしれませんが、ロンドンにおいて特に大企業との「連携」が存在しているとは感じません。前述したように日本と比べれば大手企業とは話しやすいカルチャーがあったり、コネクションを作れるイベントは多いですが、最終的には自分の実力で開拓していくしかありません。また、これは主にB2Bとしての考えなので、B2Cとしてはコメントできませんが、その他東京とロンドンが似ている点は、市場規模やビジネスマナー、デザイン性・クオリティに重点を置く感覚かもしれません。

 

今後日本のスタートアップ・カルチャーが世界的な流れの中で活性化するためには、十分なメンタルエネルギーを蓄えておくことが重要です。大切なのは、「Fail Fast文化」、「労働・雇用制度の見直し」、「英語力の底上げ」、そして「志」ではないでしょうか。

 

世界のどこにいても命がけで事業に取り組むこと。そして、DeNA、楽天やソフトバンクといった一世代前の成功事例や、最近ではメルカリやQuipperが海外展開においての好事例を作り始めているように、国内・国外において実績を作り、自信につなげていくことが大切だと思います。

 

——ロンドンのスタートアップシーンの現状、そして、ロンドン、東京、シリコンバレーのそれぞれの特徴や違いが、とてもよくわかりました。土屋さんのように世界に飛び出す日本の起業家がますます増えていくのが楽しみです。土屋さん、どうもありがとうございました!

 

ライター 近藤 雄生

http://www.yukikondo.jp/

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