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イノベーティブな英国 2/2 — 空、海、陸を最先端技術で切り拓く

  • 10 March 2016
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前回の記事では、英国が最先端の科学や技術を積極的に追求していることがおわかりいただけたと思います。今回もさらに英国が科学や技術においてイノベーティブで最先端を行こうとしてきている面をご紹介します。伝統的で古典的なだけではない英国をどうぞご覧ください。

 

ロールス・ロイス、空に海に最先端のテクノロジー

 

 

ロールス・ロイス製エンジンを搭載している全日空のボーイング787

ロールス・ロイスというと世界最高の高級車が頭に浮かぶでしょう。しかし、ロールス・ロイスは創業間もない頃から100年近く数々の名作航空機用エンジンを世に送り出してきているのです。現在のロールス・ロイスは、自動車部門と航空・船舶・産業用部門では別会社になっており、航空部門では現在、世界中の旅客機、輸送機や軍用機にロールス・ロイスのエンジンが採用されています。その普及率はとても高く、ロールス・ロイスの航空エンジンは世界中の飛行場で2.5秒に1回離着陸をしているほどなのです。なかでも、中・大型旅客機用のエンジンであるトレントは、旅客機のボーイング777、787、エアバスA330、A340、A380(2階建て旅客機)などに使われていて、日本にも多数就航しています。また、日本航空が導入予定の新型機エアバスA350 XWBにもトレントXWBが装着される予定です。

 

ボーイングに搭載されたロールス・ロイス製エンジン

トレントは、前作のRB211型で打ち出した新技術の成果を多数盛り込み、高性能・高効率を実現した、極めて先進的なターボファンエンジンとなっています。RB211では、世界に先駆けて3軸の構造としました。ジェットエンジンは、前から吸い込んだ空気を中で圧縮し、燃料と混ぜて燃焼させ、その噴流の勢いを動力としています。大部分のジェットエンジンでは、エンジンの回転軸を2つに分けることで、内部の行程にあった回転翼の運転にしてきました。一方、RB211は回転軸を3軸として、より内部の行程にあった回転翼の運転を実現し、より効率良く、より静かなジェットエンジンとなりました。トレントは、このRB211から発展したもので、その先進的で良いところを引き継いで、さらに進歩させたものなのです。さらに、トレントシリーズとしても進化発展してきています。その結果、トレントは世界中の空を数多く飛び交っているのです。

 

このトレントを船舶用に転用したのが、MT30です。MTとは「マリーントレント=船舶用トレント」という意味です。航空機用の開発で培い、実証された技術を、船舶用や産業用に転用して成功を収めるのもロールス・ロイスのお得意の手法なのです。

 

航空母艦クイーン・エリザベス級

このMT30は、2017年から英国海軍の主力艦として就役することが決まっている最新鋭航空母艦クイーン・エリザベス級の主動力装置にもなっており、米国など英国以外の艦艇にも採用されています。今回このMT30を特別に至近距離から映像取材することに成功し、映像内で開発責任者自らに詳細を説明していただきました。

 

 

ロールス・ロイスの創業者のチャールズ・スチュアート・ロールズとフレデリック・ヘンリー・ロイスは、進取の気風とより良いものの実現のために、積極的に技術開発を行ってきました。その創業者の気風と姿勢は、現在もロールス・ロイスに一貫しています。トレントやMT30の前身であるRB211エンジンは、新技術満載でその開発に苦労もしたそうです。しかし、ロールス・ロイスは英国人の持ち前の粘り強さで困難を克服し、その技術的成果を受け継いだトレントは他を凌駕する性能と効率を実現しました。そして、このトレントをもとに船舶用のMT30や定置型発電用動力が実現されたのです。

 

ロールス・ロイスのトレントとMT30は、まさに英国人の粘り強さでイノベーションを推進する姿勢の賜物なのです。

 

地上最速で技術発展と人材育成を目指す、Bloodhound SSC

 

 

自動車が発明されるとまもなく自動車レースなどが行われました。以来、自動車の技術の多くが、こうした競技によって発展してきているのです。

 

そんな競技の中に最高速度だけを競う陸上速度記録(Land Speed Record)という種目があります。そのルールはシンプルです。助走をしてきた後、全長1マイル(約1.609km)の計測区間を走行し、その往復のスピードの平均値を記録するというもの。

 

アンディ・グリーン英空軍中佐

英国はこの記録挑戦に100年近い歴史があり、1920年代から1950年代は数多くの記録を打ち立ててきました。1960年代に動力としてジェットエンジンやロケットエンジンが許可されると、米国勢が記録を更新し始めました。しかし1980年代以降、その栄冠は再び英国に戻っています。それを実現したのが、今回時速1000マイル(時速1609km)を目指すBloodhound SSCチームのコンビ、リチャード・ノーブル代表とドライバーのアンディ・グリーン英空軍中佐です。ノーブルとグリーンのコンビは、1997年にThrustSSCのプロジェクトで、人類初の陸上での音速を突破。その記録は現在も破られておらず、グリーン中佐は唯一の陸上で音速を突破した人物なのです。今回の取材では、この2人がBloodhound SSCのプロジェクトについて説明してくれています。

 

Bloodhound SSC

陸上速度記録に使われる車両は4輪であること以外ほぼ自由なので、あらゆる技術的可能性を試すことができます。ここに、この競技に挑むもうひとつの意義があります。ただ世界一の速さを目指すだけではなく、記録達成のために技術や科学を発展できるチャンスが生まれるのです。Bloodhound SSCでは、超音速戦闘機ユーロファイター・タイフーン用のロールス・ロイス製ジェットエンジンと、最新技術を開発中のコンポジットロケットが動力となっています。

 

Bloodhound SSCでは、新たな試みとして情報やデータを全て公開し、科学と技術による冒険を共に体験することで、次世代の教育や科学と技術の世界に誘うことにも役立てようとしているのです。未知の領域や前人未到の地に行くというのは英国人にとって大好きなことで、これが世界の海を征した海洋国にもなって造船技術を高め、空では世界初のジェット旅客機や垂直離着陸機の就航にもつながってきました。今回のBloodhound SSCも、陸上での時速1000マイル(時速1609km)という人類未踏野の世界への冒険をすることで、より先進的な技術を高め、より良い人材も育成しようとしています。しかも、これを産官学で支援しているのです。英国がイノベーションを尊ぶ姿勢が、このBloodhound SSCの速度記録挑戦によく現れています。

 

今回の取材では、実際の走行で使う車両がほぼ組み上がった状態を撮影し、その外観と共に内部のメカニズムも映像で見ることができます。

 

F1で技術革新をもたらしたロータスのヘリテージ、クラシックチーム・ロータス

 

 

自動車レースのF1は、世界一操縦が上手いドライバーを選ぶ勝負であると同時に、より速いレーシングカーを産み出す最先端技術を競う場でもあります。近年はコスト抑制などの理由で開発規制が強化されていますが、1960年代から1980年代のF1はまさに開発競争の場でありました。その開発競争の激しさは日進月歩どころではなく、時進日歩とも言われたほどです。そんな開発競争が極めて激しかった時代のF1で、常にイノベーションリーダーだったのが英国のロータスでした。

 

ロータスは最先端の航空技術も応用しながら、より軽量で丈夫なシャシーと、より空気力学性能に優れた車体を実現することで、F1で多くの勝利を獲得しました。

 

カーボンファイバー複合材

今回の映像でも紹介している、モノコック構造、ウェッジシェイプ(クサビ型)ボディ、グラウンドエフェクト(車体の底と路面との間の気流で車体の安定させる技術)、カーボンファイバー複合材によるモノコックシャシーは、みなロータスがF1に導入して、その大部分がロータス歴代の市販スポーツカーはもとより、現在の乗用車やスポーツカーで一般的に利用されているものです。車体の底の気流に着目する考えは、市販車の車体の底をより空気抵抗の少ない形状にし、燃費効率を向上させる技術にもつながっていて、トヨタのプリウスもこの考えと設計を積極的に応用しています。

 

カーボンファイバー複合材は映像にあるロータス88からF1に導入され、以後レーシングカーだけでなく、ゴルフクラブ、自転車、釣竿、テニスラケットなど一般の用品にも広く普及し、ひいては最新の旅客機ボーイング787でも胴体がカーボンファイバーで作られるようになっています。

 

クラシックチーム・ロータス クライブ・チャップマン氏

今回の取材先は、歴代のロータスのF1レーシングカーを維持・管理し、ヒストリックレースにも参戦しているクラシック・チーム・ロータス。映像の中で説明をしているのは、ロータス創業者でイノベーションリーダーだったコリン・チャップマンの長男でクラシックチーム・ロータスのクライブ・チャップマン氏です。クラシックチーム・ロータスの施設も1970年代前半に数々勝利を収めたロータスのF1チームの本拠地だったところです。

 

英国は現在もモータースポーツ技術で世界を凌駕し、日本や米国をはじめ、多くのレースチームは主要な部品や技術を英国から輸入しています。極めて高い専門技術を備えた英国のモータースポーツ産業は、ロンドン近郊からイングランド中部のバーミンガム周辺にまで広がり、その地域は米国のシリコンバレーになぞらえて「モータースポーツバレー」とも呼ばれています。2016年のF1に参戦する全11チーム中8チームも、このモータースポーツバレー一帯に活動拠点を置いているほどです。小型、軽量、高性能、高効率への技術を得意とする英国のモータースポーツ産業は、その先進的な技術を活かして、防衛産業や一般産業へも進出を果たしています。

 

クラシックチーム・ロータスとその歴代車両は、英国がモータースポーツでいかにイノベーションリーダーであり続け、その技術が今日の自動車や暮らしにいかに役立ってきたかを示す良い歴史遺産でもあるのです。

 

今回の英国取材映像でご覧いただいたのは、そんな先進的でイノベーティブな英国の姿のごく一部です。

 

英国は古き良き伝統を大切にする国とばかり思われがちですが、実は伝統を尊ぶ一方で、イノベーションを積極的に促進し、それを推進するスペシャリストたちを大切にしてきています。歴史の授業のなかで「産業革命」が出てきます。「産業革命」を成し遂げ、動力、交通、生活などに大きな進歩をもたらしたのも英国でした。英国は、新しいことや未来的なことが大好きな面もあるのです。おかげで、企業、大学などの研究機関、個人の発想にはイノベーティブなものが多くあり、幅広い分野でとても先進的で革新的なことを常に実現し続けているのです。そんな英国のイノベーションの成果は、英国のみならず、日本をはじめ世界中で役立っているのです。

 

小倉茂徳

小倉 茂徳(Shigenori Ogura)
モータースポーツや乗り物の技術を主に扱うジャーナリスト/コメンテーター。
SAE(Society of Automotive Engineers)会員。渡英経験多数。

 

 

 


 

本記事で取り上げたイノベーティブな企業は、下記の動画でも紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

『Mr. UKが行く英国イノベーションの旅』
フルバージョン:https://youtu.be/Cf9J3fMlDrE
ダイジェスト:https://youtu.be/cXyDWNYjGDk

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