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被災後のメンタルケアについて、日英でも協力を模索

  • 29 June 2017
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未曾有の被害をもたらした東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から6年が経ちました。この巨大地震を契機に日本は地震と火山の活動期に入ったとされ、2012年の三陸沖地震、2014年の御嶽山噴火、2016年の熊本地震などが相次いで発生しています。突然の大災害は計り知れないストレスとなり、様々な精神・心身症状を引き起こします。PTSD(心的外傷後ストレス障害)により、時間が経過したにもかかわらず「突然、被災当時のことを思い出して不安になる」といった例も少なくありません。英国では地震は多くありませんが、そのほかの災害やテロへの意識が高く、メンタルケアの体制や手法についての学術研究が進められています。

 

被災後のメンタルケアについて、日英でも協力を模索

災害派遣精神医療チームの活動とPTSD

熊本地震では、1万2,000人以上が家を失くし、約3万7,000人が避難所暮らしを余儀なくされました。東日本大震災の教訓により、地震発生後、直ちに「災害派遣精神医療チーム(DPAT:Disaster Psychiatric Assistance Team)」が活動を開始しました。

 

 

DPATは、自然災害、航空機・列車事故、犯罪事件などの後に被災者とその支援者に対して「精神科医療および精神保健活動の支援」を行うための専門的な精神医療チームです。被災地の要請に応じて都道府県が「精神科医、看護師、保健師などからなるチーム」を避難所や役所などに派遣し、1週間〜数か月にわたって精神科診察、カウンセリング、精神科救急対応などを行います。

 

このような被災者や被災者と関わる人に対するメンタルケアの必要性は、国際的に広く認められています。たとえばWHO(世界保健機関)は、苦しんでいる人々への人道的な支援方法を示した心理的応急処置(PFA:Psychological First Aid)の必要性と具体的手法を示しています(PFAフィールド・ガイドはこちら)。

 

なかでもPTSDは、災害後も長期にわたって続く深刻な精神的後遺症です。被災からかなりの時間が過ぎても、「恐ろしい体験の夢を見る」、「体験時の情景を思い出してしまう(フラッシュバック)」、「イライラする」、「眠れない」といった症状がみられます。精神科医などの専門スタッフによるカウンセリング、当事者同士のグループセッションなどによって心の傷の回復を図ることが必要で、症状によっては抗うつ薬や抗不安薬などが使われることもあります。

 

英国大使館でも様々なイベントを通じて支援

英国は、災害対策研究予算として、GDPの0.03%に当たる年間4億5,000万ポンドを投入しています。その研究成果は英国のみならず、日本を含む各国の支援にも生かされています。2016年の熊本地震後には、英国大使館が半年にわたってメンタルケアシステム構築のための支援を行いました。また、同11月には東京を拠点とする英国の専門家の協力を得て、熊本市役所職員やボランティアグループ、学校教師などに向けたストレス管理についてのワークショップが開かれました。

 

被災後のメンタルケアについて、日英でも協力を模索

さらに2017年1月31日(火)には、英国大使館において、日英の災害時のメンタルケアに関する情報交換を目的としたワークショップが開かれました。当日の午前中には、エクセター大学教授のユージーン・ムラン氏、キングス・カレッジ・ロンドン教授のニール・グリーンバーグ氏、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 災害時こころの情報支援センター長 金吉晴氏が、それぞれの専門の立場で基調講演を行いました。

 

 

続いて、WHO神戸センター テクニカルオフィサーの茅野龍馬氏、防衛医科大学校准教授の重村淳氏、九州大学教授の田中真理氏、熊本大学教授の髙原朗子氏らによるプレゼンテーションがあり、午後には、参加者を交えたワークショップスタイルで支援システム構築、コミュニケーションの重要性、地域社会の役割、災害を取材する側の倫理原則の徹底などについての議論がなされました。

 

災害時こころの情報支援センターは、東日本大震災後にPTSD症状に苦しむ人々が増えたことを受けて設立されました。被災県によるこころのケアセンターの設置を支援し、総合的な調整、助言指導、データ分析を行うことをミッションとしています。岩手、宮城、福島の各県におけるメンタルヘルス支援の質の向上、全国の災害時における心のケア対応力の向上などを目指して活動を続けています。

 

災害やテロによって引き起こされる、PTSDをはじめとする心の深い傷やトラウマなどの精神症状のケアは世界的な課題ともいえ、国際的な協力が不可欠な状況です。日英においても、学術研究やトレーニング活動においてタッグを組み、エビデンスに基づくメンタルケア実現に向けた展開が期待されています。

 

サイエンスライター 西村 尚子

 

 

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