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英国が進める細胞治療および再生医療の研究と実用化

  • 30 October 2015
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BioJapan 2015 展示会場 MedCityのブース

 

2015年10月14日(水)、パシフィコ横浜で開催されたBioJapan 2015のプログラムの一環で、MedCity主催によるセミナー「英国における細胞治療と再生医療研究及び実用化の最新動向(Latest developments in cell therapy and regenerative medicine research and translation in the UK)」が行われました。MedCityは、ケンブリッジ、ロンドン、オックスフォード、イングランド南東部にまたがるライフサイエンスのクラスター地域をカバーする組織の名称で、2014年に設立されました。この地域は、「黄金の三角地帯」とも呼ばれ、世界有数の研究所、数千人規模の研究者、臨床試験に関する豊富な知見、グローバルビジネスなどを包括した一大コミュニティーを形成しています。MedCity会長でImmunocore社最高経営責任者を兼務するエリオット・フォースター氏ら4人が来日し、それぞれの立場でMedCityでの取り組みを紹介しました。

 

MedCityのミッションと強み

はじめに、フォースター氏が登壇し、MedCityがボリス・ジョンソン ロンドン市長のリーダーシップのもと、英国政府のバックアップも得て設立された経緯を説明。「私たちのミッションの一つは、幹細胞や遺伝子治療に関する最先端研究を進め、その成果を細胞治療や再生医療用のプロダクトにつなげることで、患者の役に立つことです」と話しました。そのために、各国から企業、投資家や研究パートナーを集めており、日本企業にも積極的に加わってほしいとコメントしました。

 

MedCity 会長 エリオット・フォースター氏

MedCity 会長 エリオット・フォースター氏

さらに、「ロンドンは、疾患レベルでも人種レベルでも、実に多様な患者が集まる国際都市です」と話し、MedCityが基礎研究を応用につなげるトランスレーショナルリサーチに最適な環境であると強調しました。配布された資料によると、細胞治療と遺伝子療法の利点を共に活用した「キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法」が開発されているなど、すでに目覚ましい成果が上がっているようです。CAR-T療法は、がん患者のT細胞を取り出し、遺伝子を再プログラムして増殖させたうえで患者の体内に戻すというもので、大きな注目を集めています。

 

最後にフォースター氏は、ロンドン株式市場がバイオ関連企業の投資を大々的に引き込んでおり、2014年にはベンチャーキャピタルによる英国ライフサイエンス企業への投資として約7億ドルを調達したことを紹介。「日本からも、武田薬品やシオノギ製薬が参画してくださっていますが、みなさまもぜひご検討ください」とまとめました。

 

小児科医の立場で、学術研究と臨床応用を橋渡し

続いて、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 小児保健センター 小児免疫学専門(UCL Institute of Child Health Paediatric Immunology)のエイドリアン・スラッシャー教授が登壇しました。小児科と免疫領域を専門とするスラッシャー教授は、MedCity内にある小児病院や小児保健センターなどと協働し、学術研究を臨床につなげるべく奔走。「私たちは、遺伝子治療や細胞治療の対象となるような希少疾患に重きを置き、治療法の開発とトレーニングを行っています」と語りました。これまでに、重い免疫不全を引き起こすアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症などを対象に、患者から取り出した造血幹細胞に正常遺伝子を組み込み、増殖させた後に患者の体内に戻す遺伝子治療を標準化してきたそうです。

 

さらにスラッシャー教授は、この15年で免疫不全を起こす複数の遺伝子疾患、血友病、ウイルス疾患、がんなどの疾患をターゲットにしてきたことを紹介し、「現在は、眼球後部に遺伝子を導入する臨床試験を始めており、失明の危機を脱することができた症例を得ています。こうした取り組みに、日本もぜひ加わってほしい」と結びました。

 

確実なプロダクト製造のための取り組み

3番目は、UCL 再生医療・生物学的処理専門(Regenerative Medicine Bioprocessing)のクリス・メイソン教授が、自らの取り組みについて紹介しました。UCLは英国において特に重要視されている大学で、「世界の大学トップ10」にも入っています。

 

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 再生医療・生物生物学的処理専門 クリス・メイソン教授

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)
クリス・メイソン教授

遺伝子治療や細胞治療のスケールアップをはかるとともに、研究機関からスピンアウトした企業の育成に尽力する日々について紹介。そのうえで課題について次のように話しました。「まだまだ、基礎研究と臨床の間には大きなギャップがあります。臨床の場で実用化するには、研究を熟成させ、いかにスケールアップするかを考えなくてはなりません。」

 

 

 

 

さらにメイソン教授は、課題を克服するためには、英国内でこれまで一元化されていた「患者由来試料の採取からプロダクト製造までの過程」を分散化させ、同時に自動化やGMP化をはかっていくことが重要だと説明。最後は「細胞移植や幹細胞培養を必要とする脊髄損傷や角膜損傷などをターゲットに、引き続きプロダクトの製造方法の改良に取り組んでいきます」とまとめました。

 

細胞治療カタパルトが企業を強力にバックアップ

セミナーを締めくくったのは、細胞治療カタパルト(Cell Therapy Catapult)で商取引・知的財産(Transactions and Intellectual Property)の責任者を務めるマイケル・ベネット氏です。ブログ記事「日英連携によるビジネスと研究たな可能性を探る」でもご紹介している通り、細胞治療カタパルトは、細胞治療や遺伝子治療などの個別化医療を実用化するためのイノベンションセンターです。2012年にロンドンのガイズ病院を拠点にして設立され、細胞治療を進めるためのあらゆる知見、つまり臨床試験から、規制、製造、市場アクセスに至る高い専門知識が用意されています。すでに培養細胞株や細胞由来のプロダクトなどで成果を上げています。

 

「細胞治療カタパルトは、臨床医や研究者を100人以上抱えており、英国政府から2.5億ドルの資金を得ています。私たちのミッションは細胞治療業界を育てること。資金に不安を抱えている小企業や、自分たちのラボを持たない企業でも実現可能なビジネスモデルを構築しており、臨床試験や治験のサポート、欧州当局との交渉支援もします」とベネット氏は語りました。細胞治療カタパルトが、MedCityに拠点を設けた企業を成功に導くために機能すると強調しました。

 

セミナーは予定時間ぎりぎりで終了。その後は会場内のあちこちで、参加者とMedCityスタッフとの談話風景が見られました。

 

サイエンスライター 西村 尚子

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