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グラフェンの研究から見るマンチェスターの発展

  • 30 June 2016
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地方都市再生の象徴
前回の記事でご紹介したように、産業革命と共に目覚ましい発展を遂げたマンチェスターですが、その後、産業も街も衰退していきました。しかし、1990年代から始まった徹底的な市民参加による街づくりのおかげで、現在では、ブレア元首相が「21世紀において、マンチェスターほど見事に復活を遂げた都市はない」と述べるほど、今も再開発が進み、活気づいた街になっています。ロンリープラネットが選ぶ「2016年に訪れるべき世界の都市ランキング」で8位にランクインするなど、古き良き街並みを残しながら、近代的な建物が混在する新しい観光地として人気も高まりつつあります。

 

今回は、学園都市、研究都市として現在のマンチェスターの発展を支える「グラフェンの研究」について、紹介したいと思います。

 

グラフェンの発見はコロンブスの卵!?
カーボンナノチューブやフラーレンなど、炭素原子が結合した新しい材料は、半導体や医療など様々な分野での実用化に向けて応用研究が進められています。なかでもグラフェンは、2004年に発見されてから6年後の2010年にノーベル物理学賞を受賞し、今最も注目を集めるナノカーボン材料のひとつでしょう。

 

グラフェンの発見からわずか6年でのスピード受賞は、2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞したiPS細胞の研究と同じように、学術的な重要性に加えて、新しい材料としての実用化の観点でも大きな期待値と画期性があると言えます。

 

そのノーベル賞は、マンチェスター大学のアンドレ・ガイム氏とコンスタンチン・ノボセロフ氏による「2次元物質グラフェンに関する革新的実験」により授与されましたが、革新的実験と表現された実験方法が極めてシンプルで原始的な方法であったため、ノーベル賞委員会からも、「地球上の生命の基本材料である炭素は、2次元の素材グラフェンの革新的な実験によって、私たちを再び驚かせた」と表現されました。

 

その実験方法とは、セロファンテープでグラファイトの薄片を剥がし取り、この薄片にまたくっつけて、剥がしてを繰り返して薄くし、シリコン基板の表面にこすりつけ、薄いグラファイトの中から、およそ0.38ナノ(ナノは10億分の1)メートルという炭素原子一層だけの厚みのシート"グラフェン"を取り出すことに成功した、というものでした。多くの研究者でもできたであろうこの実験方法によりグラフェンの発見に至ったことは、研究者の中でも驚きの方法だったことでしょう。

 

この実験により、人類は炭素原子1つ分の厚さの炭素シート、つまり究極の2次元素材を手にしたことになります。

 

グラフェンの特徴
炭素原子が蜂の巣のような六角形の格子を作りながら、シート上に並んだ構造を有するグラフェンには、多くの驚くべき特徴があります。鉄の100倍の強度と高い柔軟性。シリコンに比べて電気は100倍流れやすく、熱は金属の10倍から100倍伝わりやすい。また、透明で常温でも安定な物質であり、熱にも強く扱いやすいことも特徴のひとつです。

 

英国や日本をはじめ、各国でグラフェンの大量生産に向けた研究も進んでおり、エレクトロニクスやエネルギーなど幅広い分野での応用・商業化が期待され、今後社会に大きなインパクトを与えることでしょう。

 

イノベーションの創出・けん引に向けて

国立グラフェン研究外観

国立グラフェン研究所外観

マンチェスター大学は、グラフェンを中心とした2次元材料の研究とイノベーションを推進する研究施設「国立グラフェン研究所(NGI)」を6,100万ポンドをかけ建設し、2015年3月にオープンさせました。筆者もNGIの事業化を指揮するジェームズ・ベイカー氏の案内により、施設内を見学する機会を得ました。

 

 

 

炭素の色である黒を基調としたモダンな外観は、古き良き趣を残すマンチェスター大学のレンガ造りの建物群の中でひときわ目立つ存在でした。また、NGIは実験の妨げとなる電子機器などからの小さな揺れを軽減する独立した建築構造をはじめ、1,500m²と500m²の2つの巨大なクリーンルーム、レーザー光学室、計測室、化学室などを備えています。そして、最新のビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)をもとに、ガスや化学薬品、電気、換気の供給は、高速・高効率なシステムを導入しています。235人以上の研究者、50以上の多分野に渡る各国の大学・企業と共に、プロジェクトを進めています。NGIは日本とも積極的に協力関係を結んでおり、複数の企業や研究機関とグラフェンの応用研究、商業化を進めています。

 

国立グラフェン研究所

国立グラフェン研究所

NGIが目指すのは、特許の数ではなく、価値あるコマーシャルプロダクトの基礎を作ることであり、例えば従来のLED電球よりも長寿命で安価なグラフェン電球を開発し発表したことに象徴されるように、"It’s quality not quantity"ということを明確に打ち出しています。「カーボンファイバーのテニスラケットがグラフェンに変わる頃には、材料、電気、航空、自動車、医療、メンブレンなど様々な分野で社会に大きなインパクトを与えていると思うよ」と言っていたことがとても印象的でした。NGIは、グラフェンの研究推進拠点、英国の経済と社会に利益をもたらす学術界と産業界のパートナーシップのハブとして、まさに"The Home of Graphene"と位置付けられています。

 

さらに、マンチェスター大学は6,000万ポンドをかけて、「グラフェン・エンジニアリング・イノベーション・センター(GEIC)」を2018年にオープンさせる予定であり、NGIを補完し、グラフェンの商業化を強固に推し進めようと計画しています。今後ますますマンチェスター大学が世界のグラフェンの研究および商業化の中心になっていくことでしょう。

 

グラフェンの街、マンチェスターに来てみませんか?
ESOF 2016 in Manchester

2016年7月23日(土)から27日(水)に開催されるサイエンスフォーラム「ESOF 2016(ユーロサイエンス・オープン・フォーラム)」では、"Science as Revolution: from Cottonopolis to Graphene City"をテーマに様々な分野のセッションが持たれます。

 

 

 

なかでもアンドレ・ガイム氏のキーノートセッションやコンスタンチン・ノボセロフ氏によるグラフェンに関するセッションでは、今後のグラフェン研究の応用や展望だけでなく、どのように想像力を掻き立てて困難を乗り越え成功に導いていったのか、一流の科学者の考え方が聞けるまたとない機会となるでしょう。ESOF開催期間中、NGIの施設見学も計画されていますので、最先端の研究施設を見ながら、より専門的な最新の研究情報とネットワーキングの機会を得ることができます。

 

また、マンチェスター産業科学館では、企画展「Wonder Materials: Graphene and Beyond」が7月23日(土)より開催されます。過去から現在に至るまでのグラフェンのストーリーや科学とアートを融合させた展示を通して、最新のグラフェン研究や今後の可能性を知ることができます。この企画展は2018年以降ロンドンサイエンスミュージアムを皮切りに国内外へ巡回されます。日本でも見られる日が来るかもしれません。

 

マンチェスターとグラフェン研究にぜひ注目してみてください。

 

日本科学未来館/ESOF 2016 Delivery Team
谷村 優太(Yuta Tanimura)

日本科学未来館/ESOF 2016 Delivery Team 谷村 優太(Yuta Tanimura)

 

 

 

 

 


 

「ESOF 2016」の詳細は、イベントページでご確認ください。

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