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大英自然史博物館展始まる!駐日英国大使館ではトークショーも開催

  • 30 March 2017
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英国の大英自然史博物館が所蔵する至宝約370点の展示会が、2017年3月18日(土)より東京、上野の国立科学博物館で始まりました。ほぼすべてが日本初公開で、「始祖鳥」などの自然史博物館の外に出すのも初めてという標本も多くあります。本展覧会を後援する駐日英国大使館では、17日(金)の午前中に大英自然史博物館館長のマイケル・ディクソン氏ら3名によるトークショーが行われました。さらに、同日夜には一足早く、プレス向けの内覧会も開催されました。

 

大英自然史博物館とは

ロンドンのサウスケンジントンにある大英自然史博物館大英自然史博物館(The Natural History Museum)は、ロンドンのサウスケンジントンにある世界有数の自然史博物館です。所蔵する標本は8,000万点におよび、収集活動のみならず、学術的な調査研究、解析、情報のデータベース化なども行っています。毎年約500万人が訪れ、イギリスで最も人気のある観光スポットの一つになっています。

 

 

 

同館は、大英博物館の分館として、1881年の復活祭の翌日に開館しました。標本は、17〜18世紀に収集されたハンス・スローン卿のコレクションに端を発しています。開館に寄与したのは、比較解剖学者だったリチャード・オーウェンです。ハンテリアン博物館の学芸員だったオーウェンは1856年に職を辞し、その後は大英博物館の自然史コレクションの管理を担当していました。

 

オーウェンは、増えつづける博物学標本のコレクションを置くためのスペースがないことに不満を感じ、「収蔵のための別の建物」が必要であると評議員会に直訴していました。1963年、評議員会はようやく分離を決め、大英博物館の分館ではなく「大英自然史博物館」として独立させました。入館は無料で、老若男女が、それぞれの楽しみ方で満喫できる自然史博物館になっています。

 

自然史博物館の最新技術にフォーカスしたトークショー開催

トークショーには、アカデミア、博物館関係者、産業界、メディア関係者などが参加。会場は童心に帰ったようなワクワク感で満たされました。冒頭で、ポール・マデン駐日英国大使が「大英自然史博物館のコレクションは極めて幅広いのが特徴です。私はケンブリッジ大学で地理学を専攻しましたが、当時、自然史博物館でウィリアム・スミスの世界地図を興味深く見たのが忘れられません。250年以上にわたって私たちの自然への理解を促し、人類を苦しめる寄生虫対策や気候変動の評価などにも寄与しています」と挨拶しました。

 

スティーブン・グリーン大英自然史博物館 評議会議長次に、スティーブン・グリーン大英自然史博物館 評議会議長が挨拶しました。「元銀行家の私は科学の専門家ではありませんが、コレクションの素晴らしさや探究の成果には目を見張るものがあります。建物も非常に美しく、あらゆる世代の人々が自然史を目の当たりにできます。私も少年の頃にはじめて連れて来てもらい、後に自分の娘を連れ、孫も連れていきました」と話し、「今回、東京で展覧会を開けることを非常に嬉しく思います。コレクションを見ていただくことで、過去を振り返るだけではなく、現在や未来の問題を考えるきっかけにもなることを願います」とまとめました。

 

マイケル・ディクソン大英自然史博物館館長さらに、マイケル・ディクソン大英自然史博物館館長が登壇。まず、「これまでに私たちは上野の国立科学博物館との協力関係を築いてきており、良い関係が今回の展覧会の実現につながりました。大英自然史博物館は世界に誇るべき施設で、国境を超えて人類に寄与すると考えています。今回は約370点を日本に運びました。18〜19世紀にフックやダーウィンなどが収集したもので、地球の歴史を語る貴重な財産です。できるだけ多くの方に見ていただきたいと思います」と話しました。さらにこの先の自然史博物館の役割についても触れ、「多くの生物が絶滅の危機に瀕している現在の地球では、種のデータ収集が重要です。日本では皇室の方々が生物分類の専門家としても活躍されています。私たちは自然史博物館がどのように社会に貢献できるかを問い続けており、最新技術を駆使した解析や情報のデジタル化なども進めています」と話しました。

 

過去・現在・将来を見据えた自然史博物館のミッション

大英自然史博物館 ディレクター・オブ・サイエンス イアン・オーウェンス氏ここからは、本展覧会の標本責任者である大英自然史博物館 ディレクター・オブ・サイエンスのイアン・オーウェンス氏による解説でした。同氏はまず次のように述べました。「映像をお見せしながら、私たちの活動についてご紹介したいと思います。大英自然史博物館は私たちに知的革命をもたらしてきました。自然についてだけではありません。新たな視点による人間の理解をも深めることができると思います」。

 

 

ダーウィンによるフィンチの標本

ダーウィンによるフィンチの標本
©Trustees of The Natural History Museum

ダーウィンによるフィンチの標本
チャールズ・ダーウィンはビーグル号で世界を航海する途中でガラパゴス諸島に立ち寄り、聖書に書かれている生物の起源が正しくないと考えるようになりました。たとえば、ガラパゴス諸島にのみ生息する小型の鳥フィンチは、生息する島によって大きさやくちばしの形が少しずつ異なっていました。そして、航海中に様々な生物を観察・考察する過程で、「生物は環境に適応するように進化してより多様な種がもたらされる」とする自然選択説を提唱するようになり、1859年に『種の起源』としてまとめた著作を出版しました。

 

 

人類の足あと
私たちが属するのはホモ・サピエンスですが、それより前の人類化石が発掘されたことで、私たちとは異なるホモ・ハビリスやホモ・ネアンデルターレンシスなどのヒト族がいたことが明らかになりました。

 

チャレンジャー号探検航海

チャレンジャー号探検航海
©Trustees of The Natural History Museum

チャレンジャー号による貝や魚の収集
帆船のチャレンジャー号は、1872年から1876年にかけて世界中を航海しました。船には生物学や地誌学の研究者が乗り込み、専門家としてはじめて深海や海洋生物などを調査したのです。この時はじめて、海底にも生物がいるとわかりました。チャレンジャー号は横浜にも寄港し、数か月滞在しています。

 

 

 

 

デジタル化と最先端のゲノム解析
実物標本の収納には限りがあります。キャパシティーを増やし、互いの生物の関係性やより詳細な分類を行うには、情報のデジタル化が欠かせません。大英自然史博物館では、最新のゲノム解析、データマイニングなどを取り入れ、短時間かつ低コストでデータベース化をはかっています。まさに、「現代版 チャレンジャー号の航海」といえる試みです。ピンで刺したカブトムシの標本などのデジタル化も進めており、全8,000万の標本のうち350万でデジタル化を終えています。植物であれば、開花時期、宿主関係などの情報も書き込んで、1日に3万標本をデジタル化することができます。現在、このようなデータベースに世界中の学生や研究者が自らの研究のためにアクセスできるよう、ポータルサイトを準備しているところです。これからの自然史博物館には、このような学術研究支援の役割も期待されています。

 

海底調査
海洋に出て、深海4,000メートル地点の生物や鉱物調査を行っています。これまでに、未知の領域でリチウムなどの希少鉱物が見つかるなどしています。また、海水中に含まれる生物由来のゲノムを抽出し、DNAの配列を解読することで迅速に種を特定する試みも始めています。未知の微生物でも、ゲノムの配列を比較することで短時間に種などを同定することが可能です。

 

地球環境を守るために
人間活動による環境破壊が深刻化しており、多くの種が絶滅の危機に瀕しています。私たちは、1860年時の標本データをもとに当時の生物多様性モデルを構築し、それと現在の生物多様性とを比較しました。そして、多様性が失われていなければ100%、10%減っていれば90%、などと色分けすることにより「生物多様性完全度指数マップ」を作成しました。北米は大規模農業により、指数がかなり低くなっています。日本は経済発展の割には指数が高いといえます。アマゾンや西アフリカにもまだ望みがありそうです。

 

「生物多様性完全度指数マップ」

「生物多様性完全度指数マップ」
Newbold T. et al (2016) Has land use pushed terrestrial biodiversity beyond the planetary boundary? A global assessment. Science 353, 288-291.

 

また、この先の地球がどうなるのか、二酸化炭素濃度、平均気温上昇、世界人口増加の程度によって4つの予測がなされています。最悪のケースでは指数が低下の一途をたどります。逆に指数が回復するケースもありえます。今、この時点で環境や人口をどうコントロールするのか、その決定が私たちの未来を左右することになるのです。

 

二酸化炭素濃度、平均気温上昇、世界人口増加の程度によって予測される4つのシナリオ

二酸化炭素濃度、平均気温上昇、世界人口増加の程度によって予測される4つのシナリオ
Newbold T. et al. (2015) Global effects of land use on local terrestrial biodiversity. Nature 520, 45-50.

 

寄生虫疾患対策
私たちは、ケニアなどで寄生虫病への取り組み(DeWorm3)を続けています。たとえば、現地において研究者がヒト、家畜、犬などに寄生する充血吸虫を採取して系統関係を調べています。財団や世界保健機関(WHO)と協働することで、中立性を維持しつつ政府レベルのアクションも準備中です。創薬研究もできれば良いと考えています。

 

大英自然史博物館展 報道内覧会でのテープカット

この後は、質疑応答を経て閉幕となりました。同日の夕方17時半には、上野の会場に場所を移して開幕レセプションも行われました。報道陣を前に、ディクソン氏やグリーン氏らとともに、国立科学博物館 館長の林良博氏らがテープカットを行い、本展覧会の日本側総合監修を務める国立科学博物館 副館長の篠田謙一氏が展示概要と趣旨説明を行いました。同氏は「至宝を過去のものだけにせず、自然史博物館が現在と未来において何を目指すべきなのか理解してほしい」と話しました。

 

 

約370点を6セクションに分けてレイアウト

標本は「自然界の至宝~博物館への招待~」、「大英自然史博物館の設立」、「自然史博物館を貫く精神」、「探検がもたらした至宝」、「私たちの周りの多様な世界」、「これからの自然史博物館」の6セクションに分けて展示されています。いずれも、科学史の礎を築き、教科書に掲載されているようなものばかりです。ほんの少しだけご紹介すると、「恐竜か鳥か?議論を呼んだ化石」、「所有者に不幸をもたらす 呪われたアメジスト」、「人類史を揺るがした、ピルトダウン人大捏造事件」、「ダーウィン直筆の『種の起源』の原稿」などが来場者を待っています。またとないこの機会に、ご自身の目で堪能されてはいかがでしょうか。

 

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左から「始祖鳥」、「呪われたアメジスト」、「ピルトダウン人の頭骨片と下顎骨」、「チャールズ・ダーウィン『種の起源』直筆原稿」
©The Trustees of the Natural History Museum, London

 

サイエンスライター 西村 尚子

 


 
大英自然史博物館展
会期:2017年3月18日(土)~ 6月11日(日)
会場:国立科学博物館(〒110-8718 東京都台東区上野公園7-20)
詳細は公式ホームページをご覧ください。

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