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英国の取り組みから見る、オープンデータがつくる未来社会

  • 18 February 2016
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オープンデータ

私たちは市民のひとりとして生活しながら、膨大なデータを生み出しています。通勤に交通機関を使えば移動のデータを、生活を支えるために買い物をすれば、消費に関するデータを生み出します。ひとりひとりが生み出すデータは小さくても、集まれば大きなデータ「ビッグデータ」となり、詳しく解析をすることで様々な有益な情報を得ることができます。

 

 

近年「データサイエンス」が進歩したことで、移動や消費などのビッグデータを解析し、様々な有益な情報を生み出し、民間企業においてサービスの改善・創造に活かす取り組みが生まれています。

 

そして現在、従来は行政が保有・管理していたデータを、広く一般人への公開データとしてオープン化する「オープンデータ」への取り組みが先進国を中心に加速されています。それらのデータは二次利用可能な形で公開され、社会において新しい価値創造を誘発することを目的としています。

 

社会のイノベーションは、データのオープン化にある
英国政府による"Open Data White Paper"では、データを「21世紀における新しい"素材"」と位置づけており、英国は社会と経済を成長させる公共サービスの向上や、新ビジネスの創出のため、データのオープン化を積極的に推進しています。

 

キャメロン首相は2010年に「透明性アジェンダ」を発表し、政府の透明性向上のためにオープンデータの活用を積極的に推進することを表明しています。同年、その実現に向けた有識者会議"Transparency Board"も発足しています。英国では透明性を向上させることで国民に権限を与え、イノベーションを育むとして、政府主導のもとでオープンデータを推進してきました。

 

また、政府のオープン化を世界的にリードしてゆくことを掲げ、 英国は世界69カ国が参加する"Open Government Partnership"の共同議長も務めているほか、データポータルサイト「data.gov.uk」では、健康、教育、交通、犯罪、法のもとの正義などについて約9000ものデータセットを開示しています。開発者らはこれらのデータを二次利用し、スマートフォンアプリなどを自在に作ることが可能です。

 

英国政府ではさらに議論を進めており、データが豊かにある世界において、人々が創造的かつ効果的に、それぞれの責任を明確にしながらデータの利用を進めるための秩序の創造が模索されています。オープン化されたデータへのアクセス権を市民が公平に持つにはどうすればよいか、プライバシーに配慮した高信頼のデータを生み出し、公共サービスが効率的に、市民それぞれが利便性を享受できる形で提供されるために必要なこととは何か・・・オープン化し、より高度に情報化する未来の社会へ向けた準備を進めているのです。

 

交通機関、環境、公共システム・・・オープンデータが変える社会のカタチ
英国は、政府主導でオープンデータをいち早く提唱し、社会の利便性を向上し、新産業の創出を行い、政府の透明性を高めることを志向しています。いくつかの事例を紹介します。

 

ロンドン市内を走るダブルデッカー

英国のオープンデータへの取り組みで象徴される出来事としては、2012年のロンドンオリンピックにおけるオープンデータ活用が挙げられます。

 

ロンドン市では、2007年に市長が交通網のオープンデータ化を行うことを決定しました。ロンドン交通局のウェブサイト「Transport for London」では、バスや鉄道などの運行情報や路線図、経路検索などのウィジェット、運行情報や経路探索のAPIが公開されています。

 

ロンドンオリッピック期間中は、専用の交通データ統合サイトが公開されました。オープンデータを活用し、エリアごとの混雑具合や来場予定人数がマップで公開され、数多くの利用客の利便性を向上させたことは世界的に注目されました。現在ではオープン化されたバスの位置データを使い、バス停への到着時間を把握できるアプリは、ロンドン市民にとってはお馴染みのものとなっています。

 

こうした事例の他にも、企業向けに50以上の環境関連データを提供する「EnviroFIND」というサービスがあります。環境庁や地質調査のデータが使いやすく公開されており、不動産関連の新事業が創出されるプラットフォームとして機能しています。

 

また、行政が提供する地図データなどを利用し、公共システムの整備支援を行う「FixMyStreet」というサービスも存在します。道路や街頭などの破損を、スマートフォンアプリなどを経由して行政へ知らせることができます。社会の改善を具体的に支援するために、オープンデータが生かされているのです。

 

英国政府内各省でもオープンデータへの取り組みが行われています。例えば内閣府では、どの組織が市民社会プログラムから資金を受け取ったかのデータを開示することで、国の交付金の透明化推進を行います。労働年金省では、2012年の秋より、「Work Programme」における、仕事の成果と持続的な給与に関する統計を開示しています。

 

さらに英国政府は2012年に「Open Data Institute」を設立しています。サー・ティム・バーナーズ・リー氏とサー・ナイジェル・シャドボルト氏によって創立された非営利組織であり、民間企業と協働し、オープンデータを活用するビジネスを創造します。その活動には、オープンデータを活用するスタートアップのメンタリング、技術者やアントレプレナーの養成、英国をオープンデータのリーダーとして存続させることまでが含まれています。

 

英国では政府が国策として、オープンデータを推進し、市民生活にとって利益が感じられるサービスを生み出していく仕組みを確立することに成功しているのです。

 

オープン化は進むも、実社会への導入に遅れる日本
日本政府もオープンデータ化を国策として推進しています。政府から独立行政法人や公益企業(国立がん研究センターや都市再生機構を含む全98独立行政法人のほか、航空、空港、鉄道などの事業者)に対し、オープンデータの活用を推進する働きかけを行っているのです。

 

そして日本政府の総務省では、オープンデータの条件として 

  1. 機械判読に適したデータ形式で、
  2. 二次利用が可能な利用ルールで公開されたデータ

を挙げ(※)、データカタログサイトを開設するなど、オープンデータを推進しています。現在は一部の地方自治体・民間企業による取り組みが先行しており、今後はビジネス創出などの具体的な活用に期待が集まっています。

 

日本でのオープンデータの実用例として、全国の図書館を横断検索できる「カーリル」があります。複数の図書館の蔵書データとAmazonなどの書誌データベースを独自の手法により統合検索し、蔵書情報と貸し出し状況を把握することができます。探している本が最寄りのどの図書館にあるのかわかり、そのままインターネット上で予約することもできます。図書館のデータを利活用することで、オフラインに特化しがちな図書館の利便性を向上しているのです。

 

また、地震の公共データを利用し、地震発生時に即座にスマートフォンへプッシュ通知が送信されるスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」、東京都下水道局によるレーダー、雨水計などの情報を利用し、リアルタイムの降雨情報を表示できるウェブサイト「東京アメッシュ」など、災害対策に有効なオープンデータの活用も進んでいます。

 

日本は今後、2020年の東京オリンピックを見据えたオープンデータの利活用促進の施策を打ち出す必要があるでしょう。世界中の人々が集まる東京の交通網における交通機関の最適化や、競技結果の情報開示など、山積する課題のうち、オープンデータ化によって解決することも多数存在します。

 

東京オリンピック、そして新しい日本へ向けて、英国との協力を模索しながら、オープンデータの促進模索が今、求められているのです。

 

ライター 森 旭彦

 

※出典:総務省ウェブサイト オープンデータ戦略の推進「『オープンデータ』と言えるための条件」

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