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東京工業大学とロンドン芸術大学 セントラル・セント・マーチンズ校 合同シンポジウム

  • 23 November 2017
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地域・国際格差、貧困、少子高齢化、先端医療と倫理、核、環境エネルギー。世界は次々と新たな課題に直面しています。産業、ビジネス、学術研究においても、打開策をもたらすイノベーションが、世界規模で求められています。テクノロジーがひたすら利便性や効率性を追求し、環境を支配してきた時代は終わろうとしています。とは言え政治・経済・思考の力のみでも問題は解決できません。

 

イノベーションに必要なのは真剣に人間文化を読みなおし取り込んだテクノロジー・思考の両方を作ること、アート、哲学、歴史、デザイン、言語、メディアなど、人間文化のコンテクストを理解しながら、テクノロジーのありかたを地球規模で見直すことではないでしょうか。様々な人や知見を集め見本市にするだけではもはや足りない、断片と断片をつなぐ「融合」の実体を模索したい。日本では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かう中で、環境問題が深刻化する文脈を踏まえ、持続可能性を意識した新システムや新技術開発に期待が高まっています。オリンピックイヤーを機に得られる国際社会との接点を表面上で終わらせず、しっかりとした国際交流と持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals-SDGs)の議論の上に、日本らしい文化的提案・発信をしていく必要があります。

 

そこで、東京工業大学(以下、東工大) 環境・社会理工学院では、東工大とロンドン芸術大学 セントラル・セント・マーチンズ校(以下、CSM)と協力し、テクノロジー×アート/デザインを融合させ表現していくプロジェクトを開始しました。特にこれまで東工大が取り上げることの少なかった、サステナブルファッション、ウェアラブル、メディアなどからもトピックを取り上げ、エッジの効いた短期プロジェクトやモジュール制講座群を展開します。

 

そのキックオフとして2017年5月27日(土)、英国大使館後援の下、渋谷ヒカリエにて、東工大とCSMとの合同シンポジウム「科学・アート・デザインの実験 The Experiment」が開催されました。科学技術、人文社会科学の研究者や、アーティスト、ファッションデザイナーなど、多様な分野の専門家が集まり、「実験」とは何かをそれぞれの視点から語り合いました。あまり例のない挑戦的なテーマではありましたが、300名を超える来場者があり満員の盛況でした。多くの来場者が見守る中、理工系の知とアート、デザインの融合による新しい文化・思考の創生を目指す新プロジェクトのキックオフとして、セッション1・2、キーノートセッションとも活発な議論が繰り広げられました。

 

総合司会を務める環境・社会理工学院 融合理工学系のトム・ホープ准教授

総合司会を務める環境・社会理工学院
融合理工学系のトム・ホープ准教授

環境・社会理工学院 融合理工学系のトム・ホープ准教授を総合司会とし、リベラルアーツ研究教育院の池上彰特命教授をキーノートセッションのモデレータとして迎えました。科学とデザインの融合や連携の必要性について、昨今取り上げられることが増えています。しかし、チームの間で、あるいは個人の単位で、どのように異分野が融合していくか、またどのように協力することが可能か、その「結び目の部分」を見つめる機会は多くありません。まずは互いの創作手法、研究手法を言語化することで、コミュニケーションの基盤を作ることが今回のシンポジウムの狙いでした。

 

 

CSMのジェレミー・ティル学長

CSMのジェレミー・ティル学長

東工大の三島良直学長は冒頭挨拶で、「科学の実験手法は比較的世間に知られているものの、アートやデザインの分野にはそもそも実験があるのか、どんな手法があるのかも知られていない」ことに言及し、まずは両者がわかりあうことの必要性を強調しました。一方で、CSMのジェレミー・ティル学長は、「世界で起きている問題は、ハイブリッドな考え方で解決策を考えねばいけない。アート・デザインと科学の間で手法や洞察を共有し、境界を越えていきたい」と熱く語りました。

 

 

CSMのキャロル・コレット教授

CSMのキャロル・コレット教授

セッション1「デザインと産業」では、建築家の豊田啓介氏、新進気鋭のファッションデザイナー山縣良和氏、菌糸体を利用したテキスタイル(織物)を考案するCSMのキャロル・コレット教授が登壇しました。コレット教授は「成功基準を明確にするためには仮説が必要。成果を論文にして社会に影響を与え始めたとき、デザインは社会に問題を投げかけるものになる」との自身の見解を語りました。豊田氏のプレゼンテーションでは、静的に見られがちな建築というものに対して「動きを持たせ街とコミュニケーションさせる」という豊田氏の発想に、会場が驚きと感銘を受けました。

 
   

CSMのヘザー・バーネット学科長

CSMのヘザー・バーネット学科長

セッション2のテーマは「アートと科学技術」でした。ヘビ型ロボットで知られる東工大の広瀬茂男名誉教授、準知的粘菌などと協働するアーティストであるCSMのヘザー・バーネット学科長、地域性を活かしたインスタレーション、アート教育を展開する東京藝術大学の日比野克彦教授が登壇し、実験との向き合い方が議論されました。バーネット学科長は「実験はクリエイティブの根幹にある」とし、広瀬名誉教授は「実験は理論と現実をつなぐ。思考ではわからないことが実験で理解でき新しい視野を与えてくれる」と語りました。

 

 

キーノートセッションにて

キーノートセッションにて

最後のキーノートセッションでは、池上特命教授がモデレータとして登場し、改めて「実験」とは何かを見直す議論となりました。ティル学長の「アート・デザインは美しく、洗練されたものを作り出すだけでなく、社会との関わりによって政治、経済をも変える力を持つ」という言葉が印象的でした。その他、現代アートを専門とするリベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗准教授、分子ロボットを専門とする情報理工学院 情報工学系の小長谷明彦教授、また、シンポジウム企画チームのリーダーであり言語学、翻訳学が専門の環境・社会理工学院 融合理工学系の野原佳代子教授が登壇しました。

 

伊藤准教授の「視覚障がい者は頬に感じる風で街の様子を掴む。標準と違うからこそ気づくこともある」などの語りには、多くの来場者が共感しました。小長谷教授は、「生体の微小管を使って人工的に制御できる分子ロボットが、将来、がん治療にも役立つようになるかもしれない」と語りました。

 

野原教授は最後に、「今回のような異分野コミュニケーションでは、各自の言語間の文化的背景が違うため、必ず意味の理解にズレが生じるものだが、そこにこそ面白さがある。相手によって表現を変え、内容を調整することが翻訳であり、今回の議論はある種の実験である」とし、そのズレから新しい学問が生まれる可能性を示唆しました。

 

「実験」にはそれぞれ、異なる立場があり見方があります。「実験」という立場をとらないアプローチもあること、また、「実験」を軸に、多様な分野を斬っていく、互いの違いと共通点を見出す、そのきっかけを垣間見る機会となりました。池上特命教授が今回の議論を「大きな可能性をはらむ社会的実験」と総括して、本シンポジウムは終了しました。

 

前出のバーネット氏は、シンポジウムを振り返り、CSMのウェブサイトでこう語っています。「2大学の研究者たちは両極にあるのではありません。ともに創作者であり、探究者です。そして私たちを動かしているのは、共通の『人間としての好奇心』です」。

 

CSMとのコラボレーションは2017年秋から本格化します。CSMから、ジュエリーデザイナーのウルリーケ・オベルラック氏、前述のバーネット氏、そしてプロダクトデザイン/哲学のベティ・マレンコ氏が来日、東工大にてコラボレーションを展開する予定です。ユニバーサルに、そして各地域にも役立つテーマで議論を積み上げ、21世紀の「新しい文化、イノベーションを作る研究」を担う人材教育を、CSMと協力し東工大から発信していきます。私たちの合同スタジオ活動が日本の、英国の、様々な社会の知の断片と断片をつなぎ合わせて多層的なイノベーションを模索します。ぜひこれからも本プロジェクトにご期待ください。

 

東京工業大学 環境・社会理工学院 融合理工学系
教授 野原 佳代子
お問い合わせ先:tokyotechxcsm@tse.ens.titech.ac.jp

 


 

駐日英国大使館・総領事館 科学技術部(SIN Japan):
SIN Japanは、世界28カ国に展開する英国政府のScience and Innovation Network(SIN:科学イノベーションネットワーク)の日本オフィスです。科学やイノベーションの重要テーマに係わる最良の政策ソリューションの導入、新規の日英共同研究開発や、企業または資金援助機関からの助成金獲得、貿易・投資機会の創出など、多方面から日英連携をサポートしています。

英国の研究者との連携、イノベーション・パートナーシップにご関心をお持ちの方、またSIN Japanの活動に関するご質問やご提案などがございましたら、こちらまでご連絡ください。

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