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日本の電力自由化を前に、英国のエネルギーイノベーションを学ぶセミナーが開催

  • 17 March 2016
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英国エネルギーイノベーションセミナーで挨拶をする駐日英国大使のティム・ヒッチンズ

2016年4月1日(金)から始まる「電力小売全面自由化」を目前に控え、2月29日(月)に駐日英国大使館において「英国エネルギーイノベーションセミナー」が開催されました。英国では、1990年代後半に、ガスと電力の市場が共に完全に自由化されています。電力事業についてみると、自由化当初は限られた数の発電事業者、送電事業者、配電・供給事業者しかいませんでしたが、現在は大手が大きな割合を占めるものの、小規模事業者の参入もみられるようになってきています。

 

 

 

今回、英国からセミナー講師として招かれたのは、英国外務省付主席科学顧問のロビン・グライムズ教授、バーミンガム大学でエネルギー貯蔵システムの経済的効果について調査研究を行うジョナサン・ラドクリフ博士他大学教授2名、エネルギー貯蔵ソリューション、再生可能エネルギーを活用した総合スマートグリッド、省エネ建物管理サービス、電力小売事業などを手がける計7企業の代表者です。

 

冒頭ではまず、ラドクリフ氏が、自身で政策ディレクターを務めるバーミンガム大学エネルギー研究所の活動について紹介しました。エネルギー研究所は、大気をマイナス220度の極低温に冷却して液化し、タンク内に貯蔵する「液体空気を利用したエネルギー貯蔵」をはじめとする先端技術研究を幅広く行っています。

 

ラドクリフ氏は、「私たちは、政府と民間の予算を合わせる形で、エネルギー戦略、貯蔵、原子力、水素燃料、転換技術などの領域を横断的に調査研究しています。英国政府は『2020年までに再生可能エネルギーの比率を15%に引き上げる』との目標を掲げていますが、そのためには脱炭素化を避けて通れません」と述べ、さらに次のようにまとめました。「技術的には、再生可能エネルギーの発電量変動対応、エネルギー貯蔵、スマート化、システム統合など、解決すべき課題が山積みですが、解決に向けた取り組みは電力自由化を控えた日本にとっても有益になると思います。日英で協力して状況理解と解決を目指していきましょう」と結びました。

 

NGETに接続可能な、統合されたシステム構築

英国内の送電は、ナショナル・グリッド・エレクトリシティ・トランスミッション(NGET)が、単一のシステムを用いて一括して行っています。そのため、後発参入の小規模発電事業者にとっては、「効率よく発電してNGETに接続させる技術」がビジネスの成功を分ける鍵となります。このあたりの現状ついては、Clean Power Solutions社のマーク・スタントン氏が講演しました。Clean Power Solutions社は、農家や中小企業といった小口の発電事業者を対象に、小規模な太陽光発電や風力発電のためのアプリケーション、エネルギー貯蔵システム、水素製造、NGETに接続するためのインテリジェント電源やソリューションを提供しています。

 

「私たちは、農家などが再生可能エネルギーを利用して発電した余剰分をすべて貯蔵できる総合スマートグリッドを開発し、特許も取得済みです。私たちの技術を用いると、地域の電力バランスを保ちながら余剰分を送電することができます」とスタントン氏。さらに、風力発電が天候に左右されることや、負荷や電圧を適度に調節しないとNGETに送電できないなどの具体例を挙げ、発電装置があるだけでは上手く行かないことも説明しました。

 

そのうえでスタントン氏は、「私たちは、余剰電力を水素などに転換する技術やシステムも構築しています。ご存知のように、水素は車の燃料としても使えますが、爆発するというイメージをお持ちの方が多いかもしれません。実際には、水素は低コストで安全に制御することが可能です。私たちと共に、水素経済の構築に向けて協力していきましょう」と呼びかけました。

 

ビル設備や街灯制御システムの問題

発電や送電だけでなく、電力を消費する建物や施設側の問題も重大です。英国には、建設設備と冷暖房空調設備を専門に調査する、非営利組織「BSRIA」があります。1955年設立の歴史ある会員制組織なのですが、現在は主にヒーティング、ボイラー、ヒートポンプ、再生可能エネルギー関連の調査活動や設備の販売、レンタル、法令適合性検査などを行っています。

 

次に登壇したのは、このBSRIA社のジュリア・エヴァンズ氏です。エヴァンズ氏は「英国では、エネルギーの約40%がビルで消費されており、1960年以前に建てられたエネルギー効率の悪い古いビルが問題になっています。東京も同様の状況にあると思われます。つまり、日英ともに、よりクリーンでスケーラブルなデザイン、建設を進めていく必要があります。設備関連のマーケットは年2%ずつ成長しており、顧客の要望を取り入れつつ、いかにして技術開発を進めるかが鍵と言えるでしょう」と話しました。

 

ユニークなところでは、街路灯ワイヤレス制御システムを提供するTelensa社のクリストファー・ジョンソン氏が、街路灯の消費電力、調光、省エネ、故障の有無などを監視・制御でき、携帯電話ネットワークにも接続可能な仕組みについて話しました。Telensa社のスマート街路灯ソリューションは、世界で最も多く使われている街路灯ワイヤレス制御システムになっているのだそうです。

 

「私たちのネットワークオペレーションは、低コストで街路灯のスマート化を実現します。例えば、交通渋滞が起きている場所では明るめにし、多少暗くてもよいところでは光を抑えるといったことが可能です。これは省エネにもつながります。」とジョンソン氏。最後にスマート街路灯ソリューションが、渋滞、大気汚染、駐車状況などのモニタリングにも応用可能であり、すでに中国の深圳などで展開実績がある点にも言及しました。

 

電力小売事業者のビジネスモデルとは?

最後は、電力小売事業者のビジネスと戦略についてTempus Energy社のアンドリュー・ペリー氏が講演しました。Tempus Energy社は、スマートメーターや革新的なトレーディングシステムの導入により、顧客の需要管理や行動変容を生かした電力供給の最適化と小売発電事業のモデル化を図っています。

 

ペリー氏はまず、「英国では、午後4時半から7時までが電力消費のピークで、多くの電力事業者が最も高い価格帯に設定しています。私たちのスマートメーターを導入すると、顧客のみなさんは、ピーク時に電力を使わず、オフピークにシフトするといったフレキシビリティーを発揮することが可能になります。私たちは、こうした電力消費者の行動変容こそが、送電、配電、お金の流れを最適化すると考えて事業展開しています」と話し、インフラ整備ばかりに目を向けるとコスト高になり、かえって逆効果だと説明しました。そして、「私たちの技術は、電力自由化を控えた日本のみなさんにとっても、必ず役立つものと確信しています」とまとめました。

 

お昼過ぎから夕方までのセミナーでしたが、コーヒーブレイクや質疑応答をはさみ、あっという間に終了時間となりました。講演中には同時並行で日英企業間で個別の面談も行われ、積極的に意見交換がなされました。今回のセミナーは、今後の日英間のエネルギーイノベーションに関する協力を、官民の両面から促すきっかけとなったのではないでしょうか。

 

サイエンスライター 西村 尚子

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