MENU

INNOVATION IS GREAT
FacebookTwitterGoogleLinkedIn
Feed
英国進出、輸入や研究連携へのお問い合わせ
Mail

CONTENTS

HOME > BLOG > 10万ゲノム解析プロジェクトが切り開く、希少疾患の創薬 2/2

10万ゲノム解析プロジェクトが切り開く、希少疾患の創薬 2/2

  • 14 April 2016
  • Feed

2016年3月17日(木)に開催された、「英国ゲノミクス・プレシジョンメディシンセミナー」後編の模様をお伝えします。全講演の終了後には、参加者を交えたパネルディスカッションも行われました。
※前編はこちら

 

カタパルトが推進するアカデミアシーズの産業化

Mr John McKinley, CEO, Precision Medicine Catapult

コーヒーブレイクを挟んだ後に登壇したのは、Precision Medicine CatapultのJohn McKinley氏。Precision Medicine Catapultは英国保健省が2015年に設立した「アカデミアでの成果を商業化に結びつけるための組織」です。McKinley氏は医療診断や環境産業において弁護士として25年以上のキャリアを積み、疾患、ヘルスケア、環境診断分野の産官学パートナーシップをまとめてきました。同センターの設立と共に最高経営責任者に就任し、現在に至っています。

 

 

「Precision Medicine Catapultは、創薬、診断、インフォマティクスを柱に、この先20年で発展する領域をカバーするのがミッションです。現在9領域でアカデミアシーズの産業化を進めており、日本とも提携したいと考えています」とMcKinley氏。"Precision"とは「精密な」という意味ですが、まさに高精度な診断や創薬などを可能にする産業を構築するのが目標で、その成果や活用方法についても模索するとのことです。

 

「設立されて9ヶ月ですが、英国内にとどまらず、EU内で政府レベルのアジェンダを作り上げてきました。現在の一番の課題は、患者さんのサンプルや情報をいかに集約するか、それを利用してどのような臨床試験が行えるか、といったことを検討することです」。McKinley氏はそう話し、成功への鍵は英国内の統合とネットワーク化にあると指摘しました。

 

さらに、北アイルランド・ベルファストでのバイオマーカー開発プロジェクトを例に、「マーカー開発にどのような解析が必要なのか、ライセンシングモデルをどうするのか、UK全体でのスケールアップは可能なのか、開発できた場合に医療費がどのくらい節約できるのか、などを多角的に検討しています。必然的に国外でのビジネスにもつながりますので、日本の診断、製薬、バイオインフォマティクス関連企業にも参画いただきたいと思います」とコメントしました。

 

最後に会場に向けて選択肢を示し、「あなた方の会社では、どのようなサービスを必要としていますか?」との質問を投げかけました。複数回答でしたが、「ビッグデータプロジェクトのパートナー化」を選ぶ参加者が圧倒的に多く、McKinley氏自身も納得した様子で講演を終えました。

 

ジャーナリズム目線で捉えた日本の状況

日経バイオテク編集長 橋本宗明氏

最後は、日経バイオテク編集長の橋本崇明氏が、日本の医療や医薬品産業、ゲノム医療が抱える課題や展望について講演しました。日経バイオテクは、バイオ分野の研究開発や事業化に関する専門のニューズレターです。1981年の創刊以来、隔週ごとに発行されており、バイオビジネス関係者と研究者にはお馴染みの存在です。

 

 

 

「私はジャーナリストの立場で話をしたいと思います。ここまで拝聴した限りでは、日本の状況や認識も英国と同じだと思いましたが、レベルはかなり異なると感じました。日本も研究レベルでは遜色ないですが、臨床現場でのゲノム利用や産業応用は大きく遅れていると思います」と橋本氏。日本政府も問題意識を持っており、内閣府内での議論やタスクフォース作りが始まっていると紹介しました。

 

日本も国を挙げて対策をとり始めた背景については、人口が大きく減っていくことが最大の問題とし、「高齢者は減りませんので極端な高齢社会に突入します。高齢者を含め、あらゆる世代が互いを支える必要がでてきます。そのなかで、治療から予防へと重きをシフトし、セルフメディケーションや後発医薬品開発を進めて『軽い医療』を実現することが、特に重要になります」と指摘しました。

 

そのうえで、「現状は、まだまだ課題が山積みです。例えばゲノム医療分野では、バイオバンク・ジャパンや東北メディカル・メガバンク機構などの超大型のコホート研究が進められているものの、各プロジェクトが連携しておらず、横のつながりがありません。そのため、希少疾患の研究は遅れをとり、人材の問題やカウンセリング体制の遅れから遺伝子診断や治療も進んできませんでした」と続けました。

 

最後は、「市民ベースでもゲノム医療についての議論を進めること、産業界はビッグデータや人工知能を取り入れて開発を加速させること、デジタル医療などの新たな産業創出(例えばICチップを利用した製剤作り)を努めることも重要でしょう」とまとめました。

 

英国ゲノミクス・プレシジョンメディシンセミナでのパネルディスカッションの様子

講演後は、司会の東京医科歯科大学大学院 保健衛生研究科教授の赤澤智宏氏が進行役を務めるかたちで、登壇者と参加者によるパネルディスカッションが行われました。話題は国際連携のための標準化問題から始まり、日英でのシステムの比較、ビッグデータを扱うバイオインフォマティシャンの教育や人材確保の苦労などに及びました。3時間以上の長いセミナーでしたが、講演者も参加者も、みなさん充実した時間を過ごすことができたようです。

 

 

サイエンスライター 西村 尚子

MENU