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英国のイノベーションとモータースポーツ

  • 15 December 2016
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ル・マン24時間レースとアジアン・ル・マン・シリーズ
レース・パフォーマンスティームのマシン

ル・マン24時間レースはとても有名なレースです。1923年からフランスのル・マン市で始まり、毎年6月に世界中から多くのクルマ、チーム、ドライバーが集まり、自動車とドライバーの耐久性とパフォーマンスを競うと同時に、近未来の自動車技術開発の場になっています。ル・マンの長い歴史を振り返ると、ベントレー、アストンマーティン、ジャガーなどの英国車が大活躍し、自動車の技術に大きなイノベーションをもたらしてきました。

 

近年、このル・マン24時間レースをもとにしたヨーロッパ、アジア、北米での地域選手権シリーズもできました。アジアでの地域選手権が、今回訪ねた「アジアン・ル・マン・シリーズ」です。このレースに参戦できるクルマは、LMP2とLMP3というレース専用車と、スーパーカーとも呼ばれる高性能市販車をレース用に仕立てたGTのクラスです。LMP2とLMP3では、LMP2の方がより高性能で総合優勝を争うことができるクラスとなります。

 

2016-17 アジアン・ル・マン・シリーズ 第2戦

今シーズンのアジアン・ル・マン・シリーズは、2016年10月から2017年1月末にかけて中国、日本、タイ、マレーシアを転戦し、最も好成績だったチームとドライバーがチャンピオンになります。チャンピオンのチームには、2017年のル・マン24時間レースに参加できる権利も与えられます。

2016年12月4日(日)に静岡県・富士スピードウェイで、「2016-17 アジアン・ル・マン・シリーズ 第2戦」である、富士4時間レースが行われました。

 

英国人ドライバー、ストゥルアン・ムーア選手
今シーズンのアジアン・ル・マン・シリーズには、英国ジャージー島出身のドライバー、ストゥルアン・ムーア選手も参戦しています。

 

ストゥルアン・ムーア選手

ムーア選手は、2015年に全日本F3選手権に参戦し、日本ではおなじみの選手です。また、同年9月に駐日英国大使館が、「日英モーターイノベーションの旅~EVロードショー」キャンペーンを開催した際、ユニオンジャックと「Innovation is GREAT~英国と創る未来~」のロゴをまとった日産リーフが、日本各地にある日英の主要な製造拠点を訪れたのですが、ムーア選手はロードショーの最初のドライバーを務めました。

 

今回、ムーア選手が所属するレースパフォーマンス・チームはスイスのチームで、昨年のシリーズチャンピオンチームです。フォーミュラカーで鍛えた優れたドライビングテクニックと若さと、伸び盛りの才能を備えたムーア選手は、他の2人のドライバーとともに、チームの王座を防衛するという、大きな期待を持ってチームに招かれました。

 

チャンピオンチームを支える英国の技術
レースパフォーマンス・チームのマシン

ムーア選手が所属するレースパフォーマンス・チームは、LMP2というクラスに参戦しています。アジアン・ル・マンなどの地域選手権では、自動車メーカーの参戦が禁止されており、LMP2クラスはレースパフォーマンス・チームのようなプライベーターと言われる自動車メーカーではない個人のレースチームが参戦できる最高峰クラスです。LMP2マシンの最高速度はコースによって異なりますが、長い高速のストレートがあるル・マンでは時速300kmを超えます。コーナー区間での安定が必要となる富士スピードウェイではウイングを立てることで空気抵抗も増えますが、それでも時速280kmほどに達します。

 

プライベーターのチームは、手に入れられるシャシー(車体)、エンジンとギアボックスなどから最善と思われるものを選んで購入し、それを選りすぐったドライバーに委ねることで、最高の成績を出そうとします。

 

レースパフォーマンス・チームは、ORECA(オレカ)03Rというやや旧式なフランス製のシャシーで参戦して、昨年のチャンピオンになっています。実は、このチームの勝利に英国製のエンジンとギアボックスが大きな役割を果たしているのです。

 

エンジン・ディベロップメンツ社製「ジャッド HK」

このチームは、英国のエンジン・ディベロップメンツ社が開発した「ジャッド HK」という耐久レース用エンジンを採用しています。このエンジンはV型8気筒の3600ccで、510馬力(380.3kW)もの出力を発生します。これでライバルの4500ccV型8気筒エンジンを相手に善戦しているのです。

 

 

 

エンジン・ディベロップメンツ社は、F1で君臨したエンジンの名工、ジョン・ジャッド氏が興したレース用高性能エンジンの専門企業で、同社のエンジンは世界中のレースで活躍しています。その歴史においては、ホンダ、ヤマハ、マツダなど日本の自動車メーカーともレース用エンジンで密接な関係にありました。

 

Xtrac社製ギアボックス

ジャッド HKの強大な出力をタイヤへと伝達するギアボックスも、英国ロンドン西方のサッチャムにあるXtrac社製です。同社はギアボックスの専門企業で、このル・マン・シリーズをはじめ、F1やアメリカのインディカーなど世界中のレースで活躍しています。F1では、現在世界最強を誇るメルセデスF1チームのギアボックスの開発パートナーも務めています。

 

 

今回の「アジアン・ル・マン・シリーズ 第2戦 富士4時間レース」では、ムーア選手が他の2人のドライバーとともにレースパフォーマンス・チームのマシンを駆って、2位に1周の差をつけて圧勝しました。

 

「ここで最高のものをすべて引き出せて嬉しい」と、ムーア選手はレース後、英国製のエンジンとギアボックスの高性能に支えられた勝利を振り返りました。

 

優勝したマシンのエンジンとギアボックスを360°画像で撮影しました。拡大したり、回転させたりできるので、なかなか見られない風景をお楽しみください。
※RICOH THETA Sで撮影。下記の画像左下にある「THETA」のロゴマークをクリックすると、「RICOH THETA」公式サイトが開き、全画面表示や球体表示などより多様な機能をお試しいただけます。

 

車体後方に搭載されているエンジンとギアボックス – Spherical Image – RICOH THETA

 

世界のモータースポーツを席巻する英国
レースパフォーマンス・チームのガレージ

勝つことがすべてのモータースポーツでは、その部品により高性能かつ高機能で、より小型軽量で、耐久性に富んでいることを常に求められます。そこには革新的で特殊なテクノロジーがふんだんに盛り込まれています。英国はこうしたモータースポーツ用の高性能部品と技術で世界を席巻しています。

 

 

今回紹介したエンジンやギアボックスをはじめ、これらを電子制御するコントロールユニットとシステム、高い安全性を誇る燃料タンクなど、多種多様なモータースポーツ専用部品が英国から世界中のレースに供給されています。来年からLMP2クラスのエンジンは全車共通となりますが、これも英国・ダービー南郊のレプトンにあるギブソン・テクノロジー社製に統一されると決まっています。

 

アメリカ・サンフランシスコにあるIT分野の「シリコンバレー」と同様に、モータースポーツの分野でも「モータースポーツバレー」という、専門企業が集まったエリアがあります。それは、英国のバーミンガムを中心としたミッドランド地方から、ロンドン南郊に至る広大なエリアで、多数の専門企業がそれぞれの専門性を活かしてイノベーションを推進しています。そして、そこから生み出された高度なテクノロジーが、世界のモータースポーツで求められるものになっているのです。まさに、"Innovation is GREAT"であり、"Technology is GREAT"なのです。このモータースポーツバレーでは、大学などの専門研究機関も参画していて、研究や開発を促進するばかりでなく、産学間での優秀な人材の教育と交流も活発に行っています。つまり、"Education is GREAT"でもあるのです。

 

英国は、昔からの歴史と伝統を大切にする国というイメージを持たれがちですが、実は創造力と新しいことに積極的に挑戦する気風にも富んでいます。自動車レースやラリーから超音速を突破する自動車まで、英国がモータースポーツ分野の技術で世界をリードしているのも、こうした気風と姿勢から来ているのです。英国のモータースポーツバレーから生み出された技術は、世界中のモータースポーツや自動車産のみならず、様々な分野で私たちの暮らしをより便利で豊かなものにもしてきているのです。

 

小倉茂徳

小倉 茂徳(Shigenori Ogura)
モータースポーツや乗り物の技術を主に扱うジャーナリスト/コメンテーター。
SAE(Society of Automotive Engineers)会員。渡英経験多数。

 

 

 


 

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