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「ミロ・プロジェクト」から見える英国ロボティクス技術の今

  • 17 December 2015
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英国政府は、2012年に「ロボティクスと自律システム(Robotics and Autonomous Systems、RAS)」を8大優先的成長分野の一つと位置付けました。2014年9月には、英国初のロボット戦略「RAS 2020 Strategy」を発表し、現在、様々な大学および関連企業に投資を行い、積極的にこの分野の成長を後押ししています。

 

そうした背景の中、英国で開発が進んでいる注目の自律型ロボットが「MIRO(ミロ)」<公式英語サイト>です。愛らしい小動物の姿をしているミロは、"哺乳類の脳を持つ"ロボットで、物事を学び、考え、行動する能力が備わっています。

 

Sheffield Robotics代表 トニー・プレスコット教授

ミロの開発は、ヨーロッパのロボティクス(ロボット工学)をリードする英国シェフィールド大学の研究者らによって進められていますが、今回はミロ開発の中心人物であるとともに、同大学のロボティクス研究の拠点である「Sheffield Robotics」の代表、トニー・プレスコット教授にお話を伺いました。英国でロボティクスが盛り上がった背景、ミロの魅力、そして日本と英国の関わりなど、幅広く話していただきました。

 

 

 

——RASが8大優先的成長分野に選ばれるなど、今、英国ではロボティクスが大きな注目を集めています。研究者を取り巻く環境にも変化が起きているのではないでしょうか。

 

英国でのロボティクスの盛り上がりは、ここ5年ほどの間に起きました。大学の研究グループとロボティクス関連企業との意見交換などが発端となり、そのような流れができました。そして、2013年に英国政府がロボティクスの研究に3000万ポンドの資金を拠出したことによって、研究が大幅に進み始めました。また政府は、英国工学・物理科学研究会議(Engineering and Physical Science Research Council、EPSRC)を通じて、ブリストルとエディンバラにおける博士課程での研究拠点へ資金援助も行っています。シェフィールド大学、エディンバラ大学やリーズ大学など複数の大学は、合同でロボティクスの学際的なセンターを創設することにもなりました。

 

英国のRAS業界では、学術界と産業界の双方にまたがるSIG(Special Interest Group=その分野に関する互いの知識や情報を交換する場)を立ち上げ、政府へ今後の戦略についての提案書を提出しました。最近では、政府の首席科学官が、英国におけるロボティクスの最前線についての調査も行っています。業界内では、英国のロボティクスが今後何年かの間に目覚ましい発展を見せるであろうと期待が高まっています。

 

——英国では元々RASの研究が盛んだったのでしょうか。どのように英国でRASが発展してきたのか教えてください。

 

英国のロボティクスは、航空機工学、機械工学、電子工学、コンピュータ科学など、英国が長い歴史を持つ複数の工学分野における蓄積を礎にして発展しました。まず第二次世界大戦の直後には、神経生理学者であるウィリアム・グレイ・ウォルターが最初の自律型ロボットの一つとされる「マシナ・スペクラトリクス(Machina Speculatrix、日本語では『ウォルターの亀』とも呼ばれる)」を作りました。これは、脳研究から導かれた原理に従って行動するロボットで、その後、脳研究をベースにしたロボット設計の流れは、我々Sheffield Roboticsの研究において、現在も受け継がれています。また、50年代と60年代には「人工頭脳学」という分野の研究が英国で盛んに行われ、以来、ロボティクスの発展に多大な影響を与えています。

 

近年、英国は石油やガス産業で使用される潜水ロボット、トンネルの掘削や調査に用いられる蛇状ロボット、さらには原発内など危険な場所で使用されるロボットの開発においても、世界をリードする存在として認知されるようになっています。

 

——現在、英国が最先端の科学技術との関連で語られることは少ないように感じますが、歴史的に見ると英国は産業革命の始まりの地であり、世界の科学技術の発展を牽引してきた国であることに気づかされます。英国の科学技術面における強みは、改めてどういった点でしょうか。

 

英国は小さな国でありながらも歴史的に工学や科学の様々な分野において世界をリードする存在でありました。ニュートン、ダーウィンから、ブルネルやロジー・ベアードまで偉大な科学者やエンジニアを輩出してきましたし、アラン・チューリングのような科学者の力によってコンピュータの分野を切り開いてきたのも英国です。英国には現在、インペリアル・カレッジ・ロンドンやケンブリッジ大学のように工学における中心的な研究機関があります。また、ロボティクス分野においても、英国はドイツに匹敵するヨーロッパ最大の研究拠点となっています。RAS関連の新しい企業も多数誕生しており、政府の資金援助や熱意ある大学研究者たちに刺激を受けながら次々に新たなアイディアを生み出しています。

 

——ミロ・プロジェクトは、英国のロボティクス分野が持つ力の大きさを感じさせます。その詳細について少し伺いたいのですが、ミロの最もユニークで魅力的な点を教えてください。また、ミロの開発を可能にした技術はどのようなものでしょうか。

 

自律型ロボット「MIRO(ミロ)」

自律型ロボット「MIRO(ミロ)」

ミロ・プロジェクトの新しさは、哺乳類の脳からヒントを得て制御アーキテクチャが設計されている点です。すなわち、ミロを制御するソフトウェアにそのユニークさがあります。私たちはこのアーキテクチャを15年かけて開発し、その間にScratchbotやShrewbotといった動物型ロボットにおいて試験を重ねてきました。このアーキテクチャは3つの異なるマイクロプロセッサーを使用しています。1つ目は脳幹と脊髄の役割を果たすもので、これが反射行動を制御します。2つ目は中脳にあたり、注意、動機、感情を制御し、3つ目は大脳皮質に相当し、学習、知覚、ナビゲーションや言語力を制御します。

 

 

 

——ミロは徐々にいろいろなことを学び、個性を獲得すると聞いています。具体的にはどのようなことができるようになるのでしょうか。

 

ミロは「強化学習」によって学んでいきます。つまり、犬に対してするように、何か行動ができた時に頭を撫でるということを繰り返すことで学習していきます。その方法で、ボールを使った簡単なゲームを覚えたり、特定の音に対して反応を示したりするように訓練することができます。例えば、玄関のチャイムが鳴ったらドアの前に行って待ち、誰が入ってくるかを見るといったことができるようになります。

 

ミロは現在、機械的なロボットとしては完成しているものの、制御アーキテクチャ、中でも特に、複雑な行動を制御する大脳皮質にあたる部分に関しては開発途上にあります。完成時期は未定ですが、早くその時が来るよう日々開発を進めています。

 

——英国にとって日本は長年にわたって重要なパートナーであり続けています。そして現在の「Innovation is GREAT~英国と創る未来~」キャンペーンを通じて、ますます英国の技術や創造性が日本で広く共有されることが期待されています。この状況の中で、プレスコット教授が日本に期待されることはありますか。両国のパートナーシップをより効果的かつ有意義なものにするために大切なことは何でしょうか。

 

英国と日本は現在、同じような問題に直面しています。例えば、建物、橋や発電所などのインフラの老朽化が進み、検査と修理が必要であることや、人口の高齢化です。これらの問題に取り組むために英国と日本が専門知識を共有できればとても良いと思います。

 

また現在、英国政府と日本学術振興会をスポンサーとした相互訪問や交流も行われています。2016年には、EUの主導で老人介護ロボットの共同研究プロジェクトに対する資金援助の予定があり、英国の団体も参加できることを期待しています。

 

そのような国をまたいだ協力体制を作ることで、日本と英国が共にロボティクス研究を発展させ、新たなロボティクス企業を創設できる可能性が大いに広がっていくと感じます。

 

——今回お話を伺って、改めて英国が持つ科学技術の力を感じました。ミロの完成と共に、日本ともますます強い協力関係が結ばれていくことが期待されます。プレスコット教授、どうもありがとうございました!

 

ライター 近藤 雄生

http://www.yukikondo.jp/

 


 

2015年11月11日(水)、大阪・なにわ橋のアートエリアB1にて、駐日英国大使館・大阪大学コミュニケーションデザイン・センター共催、科学技術振興機構(JST)科学技術コミュニケーション推進事業「ネットワーク形成型」、英国工学・物理科学研究会議(EPSRC)支援のもと、「日英ロボットシンポジウム-ロボットコンパニオンと未来社会」が開催されました。

 

今回取材を受けていただいたトニー・プレスコット教授をはじめ、大阪大学の石黒浩教授、浅田稔教授、スイス・チューリヒ大学および大阪大学のロルフ・ファイファー教授の4名が、ロボットと人間の共生について講演しました。かつては製造業にのみ使われていたロボットが、いかにして現在の多様な姿に進化・発展したのか。ロボットは人間特有の感情や個性を持ちうるのか。100年後、1000年後、ロボットはどんな存在になっているかなど、刺激的かつ誰にでもわかりやすく、そしてエキサイティングな内容となりました。

 

お陰様でイベントは、政府、企業、大学、そして一般の方々100名を超える満員御礼を賜り、質疑応答を含めたパネルディスカッションでは、参加者のみなさまから多数の質問をいただきました。今回のテーマに対する関心の高さ、そしてロボット研究者への期待を感じることができました。

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