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トランスレーショナル・リサーチ・セミナー

  • 04 November 2015
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2015年10月19日(月)、駐日英国大使館大使公邸にて「トランスレーショナル・リサーチ・セミナー&レセプション」と題したイベントが開催されました。英国では、世界に誇る多くの大学、チャリティー団体、民間企業が一丸となり、医学の基礎研究を実用化・商業化するための「トランスレーショナル・パートナーシップ」の様々な取り組みが実施されています。日本でも、ライフサイエンス産業の活性化、創薬支援の取り組みが国を挙げて行われるようになり、時期を得たタイミングでの開催となりました。

 

トランスレーショナル・リサーチ・セミナー配布資料

セミナー当日は、英国の大学や研究機関に加え、今年発足した日本医療研究開発機構(AMED)も参加する形で、それぞれの立場でトランスレーショナル・リサーチに向けた取り組み、展望、課題について講演しました。さらにセミナーと同時進行で、英国大学・チャリティー団体と日本企業との個別面談も行われました。トランスレーショナル・リサーチ促進に向けた、英国の取り組みを知る良い機会にもなり、日英の産学連携パートナーシップが今後さらに広がっていくことを期待したいと思います。各講演者からの重要なメッセージをまとめました。

 

 

 

 

「AMEDのミッションと挑戦」菱山 豊氏(Senior Director, AMED)

AMEDは、慶応大学医学部長を務めた末松誠氏を理事長に迎え、2015年4月に発足。これまで文部科学省、厚生労働省、経済産業省において縦割りで行われてきた医薬研究開発を統合し、橋渡し研究支援を促進することをミッションに掲げています。医師、研究機関、製薬・医療機器企業など様々なバックグラウンド出身の約330名の職員が、臨床研究や治験のインフラ整備のために働いています。

 

支援事業は、医師主導の治験、難病研究、再生医療研究、未診断患者の診断ネットワーク構築と、非常に多岐に渡り、特に再生医療分野では、京都大学の山中伸弥教授、理化学研究所の高橋政代氏の研究もサポートしています。

 

日英は、古くよりアカデミア領域での協力関係を築いてきました。菱山氏は、「現在の英国は基礎研究とトランスレーショナル・リサーチを強く促進していますが、私たちも加えていただくことで、日本における基礎研究と産業化の溝を埋めていきたいと考えています」と述べました。

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「ウェルカムトラストの取り組み」Dr. Lars Gredsted(Innovations Division, Wellcome Trust)

ウェルカムトラストは、人々の健康に資することを目的としたグローバルなチャリティー団体で、40か国以上にのぼる約3000人の研究者を支援しています。現在は約190億ポンドの資金を有し、このうち8000万ポンドはトランスレーショナル・リサーチのために使われています。これまで約350件のトランスレーショナル・リサーチプロジェクトに投資しており、ファンド支援の領域や対象国に制限はなく、治療薬、ワクチン、診断技術、再生医療など幅広く支援しています。例えば、ルーベン大学(オランダ)のデング熱治療薬研究、メルク社のがん治療薬開発などに投資しています。遺伝子治療研究領域では、ベンチャー企業がスピンアウトした例もあります。

 

ウェルカムトラスト Dr.Lars Gredstedの講演

日本においては、開発途上国で必要とされる感染症治療薬などの開発支援を行う公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT ファンド)に対し、2017年1月までに約300万ポンドの助成金を提供することになっています。ファンドへの応募締切などの詳細に関しては、ウェルカムトランスレーショナル・リサーチのウェブサイトから入手できます。

 

 

 

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「キャンサー・リサーチ・テクノロジーが支援するがん研究」Dr. Phil L’Huiller(Executive Director, Cancer Research Technology)

キャンサー・リサーチ・テクノロジー(CRT)は、がん研究を支援する世界的なチャリティー団体「キャンサー・リサーチUK」の100%子会社で、がん領域の研究開発と事業化に特化した活動をしています。これまでに、30ものパートナーとともに前臨床・臨床開発を実施し、9種のがん治療薬を上市に結びつけてきました。また、英国全土にネットワークを構築し、英国の大学70校に対し研究支援をしています。

 

CRTはケンブリッジに研究拠点を置き、創薬のあらゆる過程を支援できる体制を整えています。また、アライアンスを目的とした他企業とのパートナーシップ、ライセンス化なども行っています。L’Huiller氏は、創薬シーズを有する日本の製薬企業との連携に期待していますと述べていました。

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「MRCテクノロジーが進める、生命科学研究のチャリティー」Dr. Tomokatsu Hongo(Summit Pharmaceutical)

MRCテクノロジーは、患者の治療向上を目指す、生命科学と医学研究のチャリティー団体。30年に渡って、学術、バイオおよび製薬企業、他のチャリティー団体を対象に、国際規模のパートナーシップ化やライセンス化を行っています。特に創薬サポートを重要視して64名の創薬研究者を有しており、自社研究も進めています。

 

日本での活動も活発で、京都大学、東京大学、第一三共などと提携しており、創薬シーズの発掘、抗体ヒト型化技術の提供と技術移転などに関するセミナーを年に数回開催しています。企業が断念した開発シーズを引き受けて、第三者へライセンスアウトしたり、初期シーズを引き受けて、リード化合物開発までを請け負ったりなど柔軟な対応を得意としています。今後は、日本企業や大学とパートナーシップを築きたいと語っていました。

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「UCLが果たす学術と産業界の橋渡し」Ms. Helen Wise(University Colleague London)

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)は、150か国から3万5000人以上の学生を集め、これまでにノーベル賞受賞者を29名輩出。2014年には世界のトップ10大学の5位にランクされています。得意とする領域は、大きく3部門に分かれています。その一つである生命医科学部門はさらに脳科学、生命科学、医学、集団健康科学に分かれ、23以上の研究所が設けられています。また、UCL病院をはじめ、眼科や小児の専門病院を有し、600万人以上の患者の臨床情報が集まっています。教授陣は、独立した研究や開発を行う一方で、臨床医として診療にもあたっています。

 

トランスレーショナル・リサーチ活動においては、窓口を一つにし、学術研究から産業化までをトータルでサポート。例えば、白血病の遺伝子治療開発の支援やベンチャー設立まで至っています。UCLは日本とのパートナーシップの歴史も古く、現在は英国の国家プロジェクト「RENKEI」事業として、理化学研究所、早稲田大学、日本学術振興会(JSPS)などとともに、日英の大学と産業界を結びつけ、将来の研究リーダー育成を進めています。

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「成功を約束する、マンチェスター大学の取り組み」Dr. Zoher Kapacee(University of Manchester)

知的財産の産業化を強力に進めるマンチェスター大学は、過去25年で100社以上のスピンアウト企業を生み出し、この10年間でスピンアウト企業および社会的企業計61社に対し、2億8000万ポンドの投資を行ってきました。5万平方メートルの敷地に多様な研究所を有し、インフラも整っています。

 

生物医科学領域では、体内時計の制御、合成生物学、バイオ燃料、皮膚科領域の研究が盛んで、特に合成生物学は英国が国を挙げて重要視しています。また、ハーバード大学や北京大学などとグローバルに連携し、認知症や緩和ケアなどの研究成果を速やかに臨床試験に持ち込んでいます。

 

産業界とのパートナーシップも強力です。例えば、アストラゼネカやグラクソ・スミスクライン(GSK)と炎症領域で連携し、日本のエーザイとも提携しています。

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「サウサンプトン大学が提供するサービス」Professor Salim Khakoo(Associate Dean Enterprise, Faculty of Medicine, University of Southampton)

サウサンプトン大学は、研究収入において英国内10位にランクされ、この15年で14社の有望企業、56社のスピンアウト企業を輩出。医科学領域では、がん、肺疾患、免疫疾患の研究に長けており、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患、iPS細胞の領域などでスピンアウトした企業を有します。生体組織工学をはじめとする、エンジニアリングとの協働も強みで、人工骨盤などの開発が進んでいます。

 

トランスレーショナル・リサーチ活動は、臨床試験データをカナダにアウトソーシングするなどグローバルに展開。民間企業とはGSKなどの大手製薬企業とパートナーシップを結ぶほか、中小企業との連携も盛んに取り組んでいます。

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「オックスフォード大発の研究や技術を商業化するIsis」Dr. David Baghurst(Isis Innovation)

アイシス・イノベーション(Isis Innovation)は、オックスフォード大学が学内の研究や技術を商業化するため、25年前に設立された会社です。英国内で最多の大学特許出願を誇り、これまでに100社以上のスピンアウト企業を輩出しています。2014年度には、597件ものライセンスおよびコンサルティング契約を英国内外のクライアントと締結しています。

 

以前は、研究成果を事業化したいと考える研究者は多くなかったそうですが、Isis設立によって大学が事業化を後押ししたことで、現在は産業化のシーズだけでなく、失敗とみなされた研究についてもフォローしています。医科学領域はがん、循環器、感染症、ゲノミクスと多岐に渡ります。研究は政府資金によるものですが、その計画は研究者自身が設計し、Isisを通したライシング収益も共有しています。会社の規模に関わらず、常時ライセンシングパートナーを世界中から募集しています。

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セミナー終了後のレセプションでは、参加者と講演者ともに活発な意見交換とネットワーキングが行われました。これを機に、日本企業と英国大学・研究機関とのコラボレーションの機会が広がることを期待したいと思います。

 

サイエンスライター 西村 尚子

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