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イノベーションを育み、ベンチャー企業を創出する英国のユニークな取組み

  • 22 December 2015
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今、日本の国から民間企業に至るまで、イノベーションの重要性が認識されてきつつあります。そうした中で、イノベーションを起こすための環境づくり、「イノベーションエコシステム」の創造が叫ばれています。日本のイノベーションエコシステムはどのように創られてゆくのでしょうか?

 

iTSCOM Studio & Hall 二子玉川ライズ外観

そうした社会背景を受け、スタートアップ企業が集積する「テックシティ」などに代表される英国の先鋭的な取り組みからイノベーションエコシステムを考えるセミナー「日英イノベーションエコシステム・セミナー:イノベーションを育み、ベンチャー企業を創出する英国のユニークな取組み」が、2015年12月2日(水)にiTSCOM Studio & Hall 二子玉川ライズで開催されました。

 

 

 

英国のベンチャー支援や育成システム、日本におけるまちづくり、日英両国の政府、大学、企業から9名が集い、講演が行われました。このレポートでは、それぞれの講演をダイジェストでお伝えします。

 

未来都市のOSをつくるということ

最初のスピーカーは、東京急行電鉄株式会社 都市創造本部ほか統括部長の東浦亮典氏。テーマは東急電鉄の都市イノベーションへの取り組みについてです。

 

東京急行電鉄株式会社 都市創造本部ほか統括部長の東浦亮典氏

東急電鉄は、東急線沿線地域の二子玉川、渋谷、自由が丘を結んだエリアを「プラチナトライアングル」と定義し、様々なプログラムを運営してきました。例えば、70社以上の民間企業、多数の学識経験者が参加する、クリエイティブシティ実現のためのプラットフォーム「クリエイティブシティコンソーシアム」や、スタートアップ企業に向けて東急電鉄沿線でのビジネス展開を支援する「東急アクセラレートプログラム」などがその代表例です。

 

 

「20世紀までの都市はいわば行政主導型の"OS"で運用されてきました。しかし21世紀における都市のOSは、考え方が個人的になり多様化する。そうした時代に合わせたまちづくりを、私たちは支援しなければならないと思います」

 

渋谷ヒカリエ、二子玉川ライズなどの創設を通し、都市創造に積極的に関わってきた東急電鉄は、プラチナトライアングルに数多く住まう「クリエイティブクラス」を惹きつけるキーワードに「GOD」を挙げています。

 

「Good Life(QoLの高い生活)、Opportunity(機会)、Diversity(多様性)によってクリエイティブクラスが集積する街が、日本のクリエイティブシティをつくる。私たちはその仮説をもとに、これからの都市のOSを実現していきます」

 

ロンドンがスタートアップの集積エリアである「テックシティ」、そして各地にある大学との産学連携を促進する「カタパルト」などを複合し、イノベーションを誘発する都市のOSとして機能させているように、日本ではプラチナトライアングルに未来都市のOSが生まれてくるのかもしれません。

 

大企業とベンチャー企業が共創する、英国のベンチャー・エコシステム

日本総合研究所 調査部 主任研究員の野村敦子氏

続いての登壇は、日本総合研究所 調査部 主任研究員の野村敦子氏。最新の調査をもとに「英国のベンチャー・エコシステム」、つまり同国のベンチャー企業が健全に栄える社会環境づくりについて話しました。

 

「英国のベンチャー・エコシステムの大きな特徴は、エコシステムの中に既存の大企業が組み込まれていることです。大企業はベンチャーに対する投資、インキュベーションやコーチングのプログラムなどを行います。また、行政側も税制面でこうした動きを支援しています」

 

英国ではベンチャー企業が新しいアイディアや技術をもとにイノベーションをつくり、大企業は事業化・市場化を推進するという役割分担が、社会的に実践されているのです。その土壌の上で、ケンブリッジコンサルタンツ社のような民間のコンサルティング会社、産学連携を行うカタパルトセンターなどがネットワーク的に組み合わさることで、エコシステムが機能していると言います。

 

「我々が英国から学ぶことは、ベンチャー企業、起業家、既存企業がお互いにオープンな関係性を持っていること、そして海外と国内の活発な人材交流に代表される多様性、エコシステムの構成要素同士の相互作用を促進するネットワーク力です」

 

日本の大企業とベンチャー企業は、やはりオープンな関係性にあるとは言い切れないものです。しかし今、大企業もイノベーションの創出に躍起です。英国の取り組みには大きな手がかりがあるのかもしれません。

 

イノベーションにとって最高の国を目指す、英国政府の取り組み

駐日英国大使館 科学技術部 部長エリザベス・ホグベン氏

続いて、駐日英国大使館 科学技術部 部長のエリザベス・ホグベン氏は、同館が実施している「Innovation is GREAT~英国と創る未来~」キャンペーンについて話しました。英国には、世界トップ10の大学のうち、4つが存在しています。さらに英国人は全世界の人口の1%に満たないが、英国は全世界の4%にあたる研究者を輩出し、世界で引用されている特許の11%を保有しています。

 

 

 

「英国には競争力や発明を強く支持する文化があります。ジェームズ・ダイソン、アニータ・ロディックなど有名な起業家を数多く輩出しているこの国は、政府がアントレプレナーを強く支援しているのです」

 

英国政府は、英国を様々なイノベーションを生み出していく上で最高の国にするため、起業家たちの声に積極的に耳を傾け、土壌を整えています。

 

「英国政府が新しく発表した企業法案では、規制緩和とスモールビジネスの支援を行うことが志向されています。さらに海外の投資家とアントレプレナー(起業家)のために新しいビザをつくり、海外とのイノベーションの共創・拡大を目指しています。もちろん、そこには日本も含まれます」

 

英国では、まさに国ぐるみでスタートアップのエコシステムを築いていくことが志向されているのです。

 

世界とイノベーションで繋がる「架け橋」を

経済産業省 経済産業政策局新規産業室 コンサルティングフェロー 石井芳明氏

日本の国はどうなのでしょうか?続いては経済産業省 経済産業政策局新規産業室 コンサルティングフェロー 石井芳明氏の登壇です。

 

「日本政府としては今、まさにベンチャー・エコシステムの創成に取り組んでいます。これまでは、ややベンチャー企業にフォーカスした施策が目立ちました。しかし、これからはエコシステムの仕組みそのものに焦点をあてていきます」

 

 

先日は、安倍晋三首相がシリコンバレーを訪問し、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグや、SpaceXのCEO イーロン・マスクらと面会したことが話題になりましたが、現在、政府主導によるグローバルなスタートアップと日本の架け橋をつくる試み「架け橋プロジェクト」が始まっています。

 

そして、人材育成プログラム「始動 Next Innovator」もスタートしました。大企業の新規事業担当者や起業家を集めて行われるこのプログラムでは、国内とシリコンバレーで育成プログラムを行い、将来、世界で活躍できるアントレプレナーの創造を目指します。

 

「今後は英国とも連携を広げたい。特にフィンテックの領域です。金融の中心地としての東京とロンドンは、互いにシナジーが発揮しやすいと考えられます」

 

日本は今、まさに世界のイノベーションとの架け橋をつくるべく、動き始めているのです。

 

日本企業に必要なのは"異種交流"

ケンブリッジコンサルタンツ社 チーフ・コマーシャル・オフィサー リチャード・トレハン氏

次のスピーカーは、まさに英国において研究とビジネスの架け橋の役割を担ってきたケンブリッジコンサルタンツ社でチーフ・コマーシャル・オフィサーとして活躍するリチャード・トレハン氏です。

 

スタートアップの集積地であり、ベンチャーキャピタルから多くの資本が集まるケンブリッジに拠点を置く同社は、サイエンス・テクノロジー分野における事業開発力で世界トップクラスの実績を持っています。トレハン氏は日本のイノベーション力を高く評価しています。

 

「例えばトムソン・ロイターによる、特許データに基づいた世界の革新企業・機関トップ100を選出する『Top 100 グローバル・イノベーター』では現在、日本の企業数は首位です。日本企業のイノベーション力は世界からも非常に高く評価されています」

 

2015年11月12日(木)には、第5回目の受賞企業が発表されていますが、日本企業の選出は世界最多の40社でした。

 

「テスラモーターズが蓄電システムを家庭用に転用することを志向していたり、アップルのヘルスケア領域への進出など、競争が激化しているイノベーション市場で日本企業が勝つためには、様々な市場、テクノロジー、そして企業が一体となった異種交流、クロス・ファーティライゼーションこそが必要です」

 

日本企業はイノベーション市場で戦うポテンシャルはすでに持っています。大切なことは、そのポテンシャルを活かした交流が促されることなのでしょう。

 

「顧客を見ない」という視点で新しい市場をつくる

早稲田大学大学院 商学学術院総合研究所WBS研究センター 准教授 池上重輔氏

続いて、早稲田大学大学院 商学学術院総合研究所WBS研究センター 准教授 池上重輔氏は、「競争と事業創造のイノベーション」について語りました。

 

現在、イノベーションという言葉は全ての日本企業にとって、重要な課題として位置づけられつつあります。しかし池上氏は、「イノベーション自体が目的になると、たとえ良い技術が出てきてもビジネスにならない」と話します。

 

「イノベーションの目的は、『イノベーションを通じて何かを達成すること』です。例えば企業であれば、新しい市場をつくって継続的な利益を上げることがイノベーションの目的になります。そして、その目的を達成するために『戦略』を講じる必要があります」

 

池上氏は、イノベーションに合わせた戦略を講じることを重要視します。例えば、新しい市場をつくるための「バリューイノベーション」に必要な戦略は、差別化と低コストを同時に実現すること。そして、「非顧客を見る」という視点が鍵を握ると言います。

 

「多くの企業は、自社にとっての大事なお客さん、つまり顧客の声を聞きがちです。しかし、新しい市場をつくる時に必要なものは非顧客の声なのです」

 

差別化と低コストを実現しながら、非顧客の声を聞く。日本企業が今までにない方法でイノベーションを起こすための、キーワードと言えるでしょう。

 

「産業革命の次は情報革命」スコットランドの試み

次は産業革命の中心地として知られるスコットランドのイノベーション事情です。スコットランド国際開発庁 日本駐在代表 スティーブン・ベーカー氏が登壇しました。同氏は「産業革命を支えたのは、発明家のイノベーションをサポートする環境づくり」にあるとし、これからのスコットランドのアプローチについて話しました。

 

スコットランド国際開発庁 日本駐在代表 スティーブン・ベーカー氏

「スコットランドは、国として、企業とイノベーションを推進する環境を整備しなければなりません。そしてアントレプレナーの大きな情熱を繋ぐネットワークを、スコットランド国内のみならず、EU、さらには国際的に張り巡らせる必要があります。そうした試みのひとつが、「スクール・オブ・インフォマティクス」です。ヨーロッパ最大の情報に関する研究機関であり、国際的な共同研究はもちろん、研究者が世界中から集まっています」

 

 

インフォマティクスはこれから、バイオや人工知能など様々なイノベーションに関わりを持っていく分野です。歴史的な革命を成し遂げたスコットランドは、現在も新しい革命を追い求めているのです。

 

「10年先の仕事をつくる」イノベーションのためのデザイン教育

近年、優れたテクノロジーは、優れたデザインとともに人々に受け入れられ、イノベーションを起こしてきたことが見て取れます。続いては、テクノロジーとクリエイティブを結びつけることによって、新しい価値創造を促す「デザインエンジニアリング」の実践者である、takram design engineering 代表で、Royal College of Art(RCA)客員教授でもある田川欣哉氏の登壇です。

 

takram design engineering 代表 Royal College of Art(RCA)客員教授 田川欣哉氏

田川氏が客員教授を務めるRCAは、インペリアル・カレッジ・ロンドンと提携し、「イノベーションデザインエンジニアリング(IDE)」プログラムを1980年に立ち上げました。これは理工学系の大学生にデザインの教育を行い、エンジニアリングのバックグラウンドを持ったデザイナーを育てようとする先進的な取り組みでした。

 

 

 

 

「デザイン領域は空間デザインやグラフィックデザイン、エンジニアリング領域は情報系から機械工学までを包摂する形で学問領域を形成しています」

 

この多様性は、まさにイノベーションにとって必要なものです。田川氏は、このプログラムで研究者からコンサルタントまでの広いバックグラウンドを持つ人々が集まり、革新的なプロダクトを生み出していくことにいつも興奮してきたと言います。

 

「僕たちは10年先の、まだ知られていない未来の仕事をつくっていく人達を育ててゆく必要があります。既成概念に取り組むのではなく、概念自体を新しくつくりだす人。つまり、未開拓にチャレンジする人をつくりだすことに、IDEは日々チャレンジしています」

 

デザインとエンジニアリング、その両輪を回せる人材によって、イノベーションは生み出されるのかもしれません。

 

スタートアップコミュニティ・東京を支える「シードアクセラレータ」の存在

最後のスピーカーは、THE BRIDGE Co-Founder兼Bloggerの池田将氏です。スタートアップの専門メディア「THE BRIDGE」を運営し、世界のスタートアップ情報を日本へ、日本のスタートアップ情報を世界へ発信しています。

 

THE BRIDGE Co-Founder/Blogger 池田将氏

「最近は『シードアクセラレータ』の役割によって、東京がスタートアップコミュニティにとって最適な都市になりつつあります」と池田氏は話します。シードアクセラレータは、初期のスタートアップに出資やコーチングなどを行い、文字通り、スタートアップを加速(アクセラレート)する役割を担います。シリコンバレーの『Yコンビネーター』が世界的に有名です」

 

 

 

「例えば日本発の『BEENOS』というシードアクセラレータは、ビジネスアイディアがなくてもアントレプレナーを支援する準備があると言います。その背景には"アントレプレナーとビジネスの相性が成功を左右する"という考えがあります」

 

スタートアップでは、ビジネスとアントレプレナーのマッチングにこそ価値の源泉があるという発想です。こうした新しい発想のもとで、新しいアントレプレナーが生まれていく。アクセラレータは、スタートアップの多様な生態系を構築する上で重要な役割を果たします。

 

「東京がシリコンバレーとは違ったユニークなスタートアップコミュニティになっていくことを期待しています」

 

昨今は、 三菱東京UFJ銀行による「MUFG Fintech アクセラレータ」なども誕生しています。多種多様なアクセラレータが生まれ、スタートアップコミュニティ・東京のエコシステムを動かし始めているのです。

 


 

本セミナーでは、まちづくり、政策、ケーススタディ、企業戦略、デザインなど、様々な視点から、イノベーションエコシステムの創造が論じられました。講演から、今の日本がイノベーションを起こしてゆく上で欠けているもの、あるいは世界的に優位性があること、英国との共通点など、様々な事実と課題が浮かび上がりました。「スタートアップコミュニティ・東京」が英国との共創のもと、世界のイノベーションの最前線へと飛び出してゆく未来は、きっとすぐそこまで来ているのです。

 

ライター 森 旭彦

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