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英国バーミンガムで始まった「エネルギーキャピタル計画」とは

  • 23 March 2017
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エネルギーキャピタル計画会長 マシュー・ローズ氏

エネルギーキャピタル計画会長
マシュー・ローズ氏

2017年2月15日、英国の中部に位置するウェスト・ミッドランズ州バーミンガムで、「エネルギーキャピタル計画」がローンチされました。これは、エネルギー分野の研究に豊富な実績を持つバーミンガム大学のエネルギー研究所が中心となって、地域全体とともに進める巨大なエネルギープロジェクトを指します。地域の大学や企業、自治体が提携して行うこのプロジェクトの内容や目的について、エネルギーキャピタル計画会長であるマシュー・ローズ氏への取材をもとに解説します。

 

 

 

 

エネルギー分野の研究で知られるバーミンガム大学

英国バーミンガム市の夕暮れ時

ウェスト・ミッドランズ州といっても、多くの日本人にとっては耳慣れないかもしれません。しかし、英国の産業史の中で非常に大きな役割を果たしてきた地域なのです。東部のコヴェントリーやウォリックシャー州には、ジャガーやランドローバーといった有名な自動車メーカーの本社があり、自動車や輸送機製造業の強い伝統が残っています。また、いくつかのF1エンジニアリング設計チームも拠点を構えています。西部にはブラック・カントリーと呼ばれる地域があり、ここでは良質な石炭が採掘され、18世紀の産業革命が始まった場所でもあります。そのため、伝統的に金属加工業や製造業が盛んな地域です。また、ウェスト・ミッドランズ州の中央に位置するバーミンガム市は、ロンドンに次ぐ英国で2番目に大きな都市であり、海外から多くの人々を惹き付ける国際都市で、人口の半数以上は英国外の文化的背景を持つ人々です。

 

そのような背景を持つ地で歴史を刻んできたバーミンガム大学は、1世紀以上にわたってエネルギー研究に積極的に取り組んできました。なかでもバーミンガムエネルギー研究所は、4つの大学から140名もの研究者を集めてエネルギーに関連する研究開発を行っており、外部から7,500万ポンドもの出資を集めるエネルギー研究の一大拠点です。

 

世界的に地球温暖化の危機が叫ばれるなか、英国は2050年までに1990年比で二酸化炭素排出量80%削減を達成目標としています。しかし、このような高い目標を達成するには、交通機関や全国の高圧送電線網をはじめ、家庭で購入する家電製品や住まいに至るまで、暮らしの中で大きな変革が求められます。バーミンガム大学エネルギー研究所は、このような問題に答えるため、基礎科学・工学からビジネスや経済に至るまでの専門知識を活用して組織的な研究や教育を行うとともに、グローバルなパートナーとの連携を推進しています。

 

エネルギーキャピタル計画とは

2017年2月15日、バーミンガム大学エネルギー研究所が中心となって、エネルギーキャピタル計画が始動しました。これは、ウェスト・ミッドランズ州全体という広大なエリアをカバーする、エネルギー関連の合同地域プログラムで、数多くの大学・企業・自治体などが参画しています。その広範なパートナーシップの中には、英国の大手エネルギーインフラ企業であるナショナル・グリッドやウェスタン・パワー・ディストリビューションも含まれています。

 

ウェスト・ミッドランズ州全体をカバーする「エネルギーキャピタル計画」

ウェスト・ミッドランズ州全体をスコープとするエネルギーキャピタル計画

 

エネルギーキャピタル計画の大きな役割の一つは、投資家や資金提供者、地域の潜在的パートナーらに単一の窓口を提供することです。そして、バーミンガムをエネルギー、廃棄物、交通インフラに関連する最良な事例の発信地にすることを目的としています。

 

マシュー・ローズ会長はエネルギーキャピタル計画の意義についてこう語ります。

 

「エネルギーキャピタル計画が重きを置くのは、パートナー企業が新たな課題に取り組む時に従来のエネルギー技術のさらに先を思い描くことです。そして、革新とクリーンエネルギー技術の解決策の開放を促すことです。こういったことが、将来のマーケットや企業を創造し、最も急速に成長させるのです。たとえば、自動車会社がハイブリッド車や電気自動車の開発を考える時、エネルギーキャピタル計画は必要になる革新的なエネルギー技術でサポートすることができるでしょう。あるいは、ナショナル・グリッドやウェスタン・パワー・ディストリビューションといったインフラ事業者がエネルギーキャピタル計画に所属していることにより、これらの企業が持つエネルギーネットワークを新しい技術の開発に役立てることで、より革新的な研究開発が可能になります」

 

また、他のエリアにはない特徴として、資金面と政治面での優位性について強調します。

 

「エネルギーキャピタル計画には、国による2つの研究開発投資が含まれています。すなわち、エネルギー・リサーチ・アクセラレーターと、エネルギー・システムス・カタパルトです。また、2017年5月に最初の市長を選出することになっており、これによって新たな権限が生まれるということです」

 

つまり、エネルギーキャピタル計画には資金面や政治面でも、強いバックグラウンドがあるということが他のエリアにはない特徴となっているのです。

 

すでにエネルギーキャピタル計画では、パートナーである企業などの多種多様なプロジェクトを支援しています。その一部をご紹介します。

 

  • タイズリー・エネルギー・パーク:
    バーミンガム大学により、熱エネルギーシステム革新のデモンストレーションを実施。
  • タイズリー・エネルギー・パーク

    タイズリー・エネルギー・パークのカーボンロードマップ
    ※画像をクリックすると別タブで拡大表示します

     

  • ウィレンホール・グリッドストレージ施設:
    グリッドストレージとリサイクルした古い自動車用バッテリーで実験を行う、2.5MWの実験用バッテリー施設。

  • ネット・フォーム:
    バーミンガム空港周辺に駐車する、15,000台の電気自動車の制御を最適化する研究を実施。

  • 未来の住宅開発:
    炭素排出量ゼロのスマート住宅の開発。

  • 電力供給の増大:
    高品質で競争力のある電力を製造業の企業にクリーンな方法で提供。
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    他にも、バーミンガム大学とアストン大学の欧州バイオエネルギー研究所では水素技術の専門のセンターがあり、ウォーリック・マニュファクチュアリング・グループでは電気自動車のバッテリー技術を扱うなど、広い分野で様々な試験計画を実施しています。

     

    日本をはじめ海外企業とのコラボレーションについて

    すでに、いくつかの海外企業とパートナーシップも結んでいるというエネルギーキャピタル計画。最後に、マシュー・ローズ会長に日本企業との今後のコラボレーションについて伺いました。

     

    「(日本においては)最新のクリーンエネルギー技術を持つ企業が、すでに初期の商業展開の準備ができていることについて興味深く感じています。これらは、すでに国内でのトライアルを成功させ、世界市場への拡大を目指しているのでしょう。 エネルギーキャピタル計画は、欧米市場に向けてのより広範な成長のプラットフォームとして日本企業に利益をもたらすことでしょう。私たちは、幅広い公的および私的支援によって、リスクの低いプロジェクトを探している投資家にとっても魅力的な環境を提供しています。また、私たちが開発している技術のうちのいくつかは、日本企業を通じて商用化するのに適しているものです。一般に日本の太陽光発電や燃料電池産業は、英国のものよりずっと成熟しており規模も大きいですから活用できる裾野も広いのではないでしょうか」

     

    英国ウェスト・ミッドランズ州の大学、企業、自治体が一体となってパートナーシップを構築し、地域全体で進んでいるエネルギーキャピタル計画。将来性のある投資先として、あるいは革新的なエネルギー技術の提供者として、その成果に世界中から大きな注目が集まっています。

     

    ライター 田中 実典

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