MENU

INNOVATION IS GREAT
FacebookTwitterGoogleLinkedIn
Feed
英国進出、輸入や研究連携へのお問い合わせ
Mail

CONTENTS

HOME > BLOG > エジンバラ大学と理研AIPセンターがAI研究でのMoUを締結

エジンバラ大学と理研AIPセンターがAI研究でのMoUを締結

  • 30 May 2017
  • Feed

人工知能(AI)が、交通、金融、工業、医療、教育、福祉などのあらゆる分野で急速に導入されつつあります。これまで英国は、マシンラーニング、ディープラーニング、自然言語処理などの分野において世界を牽引してきました。日本では、2016年4月に文部科学省所轄の理化学研究所内に人工知能研究拠点(以下AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project)センター)が設立され、革新的な次世代技術開発に向けた研究が始まりました。設立から1年が経ち、AIPセンターはスコットランドのエジンバラ大学とパートナーシップを組み、互いの強みを生かした共同研究を始めると発表。2017年4月7日(金)、AIPセンター長の杉山将氏とエジンバラ大学情報学部教授兼エジンバラ・ロボティクスセンター、センター長のセス・ビジャヤクマール氏が揃ってMoU(基本合意書)締結の調印式に臨みました。実はこの2人は東京工業大学大学院の同じ研究室で学び、プライベートでも仲が良いとのこと。調印セレモニーの様子と、その後に実現した対談インタビューをお届けします。

 

セレモニーでは、まず杉山氏がAIPセンターの概要について紹介し、次のように話しました。「機械学習や深層学習といったAIの基礎研究を進めて、学術研究の加速、社会問題の解決、倫理や法的問題の議論などを図るのが目的です。組織は大きく、目的指向基盤技術研究グループ、汎用基盤技術研究グループ 、社会における人工知能研究グループからなり、AIの具体的応用については日立、NEC、富士通などの企業と共同研究を進めます。また、英国をはじめ海外から優秀な人材を集め、日本からも世界に向けて優秀な人材を送りたいと考えています。日本橋という東京の中心部に拠点を設けたのは、産学官の様々な立場の方々に集まっていただき、議論を進めるためです」。

 

続いて、ビジャヤクマール氏が、エジンバラ・ロボティクスセンターについて紹介しました。「私たちのロボティクスセンターは、2年前に英国政府、エジンバラ大学、ヘリオットワット大学などにより設立されました。動く機械、すなわちロボット工学の領域を全てカバーし、たとえば、NASAと連携して火星に物を輸送するシステムの開発などを進めています。機械学習によりロボットの自律性を高め、船外活動や火星表面での活動ができるようにするのが目標ですが、その過程で開発した技術をスピンアウトさせ、医学、海洋開発、食糧・都市・高齢者問題などに幅広く活用させるのも大きな狙いです」。

 

さらに、2人の東工大時代の恩師である小川英光氏(現 東京福祉大学大学院教授)が、「2人がそれぞれの組織の代表者になり、こんなに幸せなことはありません。2人とも自分の考えをしっかりもっていますが、それでいて威圧感がなく、非常に素直です。互いの良いところを吸収して、良い仕事をすると確信しています」との祝辞を寄せました。最後に調印式が執り行われ、駐日英国大使館 科学技術部 部長のエリザベス・ホグベン氏を交えた記念撮影もなされました。

 

エジンバラ大学と理研AIPセンターがAI研究でのMoUを締結

右上から時計回りに、東京福祉大学大学院教授の小川英光氏、AIPセンター長の杉山将氏、エジンバラ大学情報学部教授兼エジンバラ・ロボティクスセンター センター長のセス・ビジャヤクマール氏、駐日英国大使館 科学技術部 部長のエリザベス・ホグベン氏

 


 

対談:日英のAI研究とパートナーシップ

 

——お二人はどのようにして東工大で出会われたのですか?

 

ビジャヤクマール氏
インドのティルチラパッリ大学の学部生時代に、父が政府の仕事でエンジニアとして来日しました。私も、日本の企業にインターンシップで来てみたところ、非常に良い経験ができました。留学やインターシップというと欧米に行く同級生が多かったのですが、ロボティクスをやりたかった私は、機械学習などの分野が進んでいた日本に行こうと考えました。そして、文部科学省の奨学金を得て、修士課程から東工大の小川先生の研究室に入ることになりました。来日当時は日本語が全くしゃべれませんでしたので、入学前に6か月間日本語教室で特訓しました。現在の東工大は英語での授業が充実していますが、当時は全て日本語でしたので苦労しました。

 

杉山氏
私は学部から東工大で、修士課程に進んで小川研究室に入りました。元気のいい先輩がいるなあと思ったら、それがセスさん(ビジャヤクマール氏)でした。実は私は研究者になるつもりはなく、修士課程を終えたらシステムエンジニアとして企業に就職しようと考えていました。ところがセスさんをみているうちに「研究者もいいかもしれない」と考えるようになり、道を変えることになりました。

 

——卒業後も親しくされているのですね?

 

AIPセンター長の杉山将氏とエジンバラ大学情報学部教授兼エジンバラ・ロボティクスセンター センター長のセス・ビジャヤクマール氏
ビジャヤクマール氏
博士課程修了まで5年間東工大におり、その後、理研の甘利俊一先生の研究室に特別研究員として1年ちょっと在籍しました。この理研時代には、将さん(杉山氏)と2人でイタリアに海外出張しました。ピザを食べたり、楽しかったのを覚えています。

 

杉山氏
そうそう、タクシーでぼったくりに会ったりもしましたね。

 

——現在はどのようなことに尽力されていますか?

 

杉山氏
AIPセンターは設立2年目なので、まずは国内で人材を集めて育てたいと考えています。AI領域は圧倒的に人材が不足しています。その点、エジンバラ大学には優秀な研究者が多くいるので、互いに交流できることを期待しています。ゆくゆくは、英国のみならず、世界中から優秀な人材を集め、交流や共同研究を進めたいと考えています。

 

ビジャヤクマール氏
私は機械学習とロボット工学をつなぐ研究を進めています。たとえば、データサイエンスやパラレルコンピューティングを駆使し、機械学習させてロボットをより有効に制御する手法の開発などをしています。エジンバラ大学は機械学習に強いのですが、最近ロボット工学にも力を入れはじめ、ロボティクス、データサイエンス、パラレルコンピューティングについての研究拠点を立ち上げました。もちろん、理研AIPセンターとの共同研究も進めるつもりです。

 

杉山氏
AIPセンターの研究者は基礎研究に重点を置いているので、応用については外部パートナーを求めたいと考えています。すでに日立やNECなどとパートナーシップを組みましたが、エジンバラ大学もロボット工学分野における最高のパートナーだと考えています。

 

ビジャヤクマール氏
私たちの研究所も日立などの日本の企業とパートナーシップを組んでいます。日立が物流技術を自動化するためのロボット開発を、私たちがAIと機械学習を担当しています。今日の挨拶では火星に向けての計画を紹介しましたが、火星に行くことだけが目的ではなく、その途中で開発した技術を様々な方面で応用していくことが重要だと考えています。たとえば、ロンドンで試用がはじまる自動運転技術にも転用可能です。根幹には、リアルタイムでどのようにディープラーニングさせるか、センシングできるかといった同じ問題があるからです。開発していく技術は、オンラインスーパーマーケット、原発施設での作業、宇宙ゴミ(スペースデブリ)の問題解決など、私たちの生活に幅広く役立つと考えています。

 

AIPセンター長の杉山将氏
杉山氏
日本はiPS細胞など幹細胞研究が盛んなので、当面の目標として、AIで迅速なiPS細胞のセレクションシステムなどを構築したいと考えています。がん化の危険がなく、目的の細胞に正しく分化するiPSの選別は、再生医療の普及、低コスト化、高効率化を図るために極めて重要です。同様の技術は、創薬における分子構造の最適化やスクリーニングなどにも応用でき、やはり時間と費用を大幅に削減できると期待できます。

 

 

——AIに対する倫理的、法的な規制が必要との声もあります。

 

杉山氏
私も肌でそのことを感じています。AIPセンター設立当初は独立した倫理研究部門がなかったのですが、半年経って軽視できないと考え、急遽、立ち上げました。市民や高校生向けのイベントなどでは、「AIにのっとられて支配されそうで怖い」という声をよく耳にします。研究者からすると、現在の技術力ではSFのようにはならないと思うのですが、情報が混乱しているようです。技術研究者と倫理研究者がタグを組んで正しい情報を発信していかないと、研究の発展を阻害することになってしまうと危惧しています。

 
エジンバラ大学情報学部教授兼エジンバラ・ロボティクスセンター センター長のセス・ビジャヤクマール氏ビジャヤクマール氏
英国も似たような状況にあります。私たち研究者がイベントなどで正しい情報を発信し、AIの評価、サイバーセキュリティやハッキングの問題などについて考えてもらう必要があると感じます。ただ、英国からみると日本人はロボットに親しみやすい国民性をもっていると感じます。欧米はロボットで利便性が上がるとわかっていても拒絶し、排除する風潮が強いのです。経済的には取り入れないとやっていけないところまで来ているのですが。

 

杉山氏
確かに、日本には古くから鉄腕アトムなどの漫画があり、ロボットは仲間と思っている人が多いですね。

 

——AI研究をめぐる日英の差などございますか?

 

杉山氏
見ている方向は同じだと思いますが、ベースにしている理論に国民性の違いを感じます。英国はベイズ理論(問題や状況を相互に関連し合った因果関係として表わすネットワークを構築する際に用いられる数学的原理で、AI領域でも応用されている)に基づく機械学習研究が盛んで、国際会議などでもベイズ理論に基づく質問攻めにあうことがあります。宗教の違いのような感じなので、議論を深めて互いに強いところを伸ばせると良いと思っています。日本ではAI領域の国際化がまだこれからなので、AIPセンターをその足掛かりにしたいと考えています。

 

ビジャヤクマール氏
将さんは英国やドイツなど、世界あちこちに留学しているので、AIPセンター長はまさに適任だと思います。AIPセンターが真の国際的センターになることを確信しています。

 

——ありがとうございました

 

サイエンスライター 西村 尚子

MENU